高松赤十字病院 院長ブログ

うまげな患者塾

新型コロナウイルスとの付き合い

 緊急事態宣言が解除され、我が国での新型コロナウイルスの感染はようやく小康状態となってきました。6月19日からは県をまたぐ移動が解禁となり、日常生活が徐々に戻りつつあります。実際にどの程度のヒトが感染していたのかを調べるため、国内の3地域で抗体検査が実施されました。感染の少なかった宮城県では0.03%、感染者の多かった東京でも0.1%とかなり低い数字でした。未感染のヒトが多いことから、今後感染の第2,3波が来ることが想定されますが、どのような波になるのか、なかなか予想しづらいところです。よく引き合いに出されるのは、およそ100年前に起こったスペイン風邪(インフルエンザウイルス)の教訓です。この時の日本での感染者(死者)は1918-19年の第1波で2116万人(25万人)、翌年の第2波で240万人(12万人)、さらに翌々年の22万人(3700人)でした。第2波で感染者はおよそ1/10、第3波では第1波のおよそ1/100まで減っています。今回新型コロナウイルスの感染者は6月24日時点で約18,000人(965人)ですが、抗体検査結果から推測すると日本全体で4万—12万人程度が感染していたのではないかと思われます。この100年で医学・医療は格段に進化しており、当然ながら以前より感染、死亡ともかなり抑えられています。これまでにわかってきたウイルスの特性、拡がり方、予防策などを総合的に判断すると、第2波以降が起こることは確実でしょうが、第1波の経験から、小さな波、あるいは局所的な波で封じられるのではないかと希望的ながら推測しています。一方で前述のスペイン風邪では第2波では感染数は少ないものの第1波より毒性が強くなり、致死率が増加していました。1957年のアジアインフルエンザでも第2波のほうが被害をもたらしています。ウイルスが変異、凶暴化し、死者が増える可能性があり、油断はできません。いずれにしてもコロナと付き合う(with corona)時代がしばらく続きそうです。

 次の波を小さくするため、あるいは早く収束させるためには、様々な努力、工夫が必要です。無症状のヒトがかなり多いことから、自己防御を常に念頭に置く必要があります。コロナウイルスは飛沫、接触感染が主体であるので、マスク着用、頻回の手洗い、消毒は欠かせません。社会的距離については、対面でなければ1m程度で良いようです。粘膜からウイルスが侵入するので、口、鼻、眼をむやみに触らないことが大切です。どうしてもそこに手が行ってしまいそうな時は、触る前にしっかりと手を洗いましょう。温度、湿度が上昇するこの時期は熱中症予防も大切なので、時にはマスクをはずすことも大事です。公共交通機関の中や、近い距離での対面会話中などを除き、マスクを外しても良いのではないでしょうか。なお、このウイルスは紫外線ですぐに不活化し、温度上昇、高湿度に弱いようです。しかし、感染蔓延期には当てはまらないようなので、引き続き夏でも注意が必要であり、かつ寒くなる秋以降ではさらなる厳重注意が必要となります。

 新型コロナウイルスの致死率はいまだ不明ですが、少なくともインフルエンザよりは高そうです。また一部で重症化が早く、若年者でも死亡が出るなど、インフルエンザより怖い点は多々あります。検査については、PCR検査体制が地域ごとに整備されてきており、30分程度で判明する抗原検査も施行できるようになりました。治療薬はウイルスそのものを死滅・増殖抑制させる抗ウイルス薬、および重症化を防ぐ抗血栓薬、サイトカイン抑制薬などが有望です。ワクチンについては、安全でかつ、効率の良いワクチンの完成が期待されますが、なかなか簡単ではないようです。

 感染予防対策はマスク、手洗い、距離を取ること、眼、鼻、口を触らないことの他に、トイレ、洗面台などでウイルス付着が多いので、その周辺は念入りに清拭・消毒することも大切です。あと、体調不良時には休むことも大事で、テレワーク、ウェブ会議と並んで、気軽に休む文化が醸成されることを望みます。今回のコロナ対策が良い教訓となって、職場が安全で効率の良い社会に生まれ変わるチャンスとなるかもしれません。


 最後にこの6週間ほどで、各方面(学校、企業、患者さんなど)からマスクや、お菓子など多くの寄附をいただきました。これらの温かい御支援のお陰で病院スタッフの気持ちが和み、落ち込んでいた士気が大いに改善しました。職員一同感謝を申し上げます。病院職員から、お礼のメッセージを発信しており、それを改めてご紹介します。