日本赤十字社 高松赤十字病院

ロボット手術

手術をより安全に、負担をより軽く。手術支援ロボット「ダヴィンチ」

ロボット手術センター設立のごあいさつ

前立腺がんに対して保険診療がはじまったロボット手術は今では普通の手術になりました。当院では2013年6月にダヴィンチSiを導入して、香川県で最初にロボット支援手術を開始しました。2018年12月にはダヴィンチXiという最新機種に更新し、2021年12月にはダヴィンチXiを追加導入し2台体制となりました。
保険診療という観点からロボット手術の拡大をみますと、2016年には腎がんの腎部分切除術、2018年には心臓弁形成術・縦隔腫瘍・肺がん・食道がん・胃がん・直腸がん・膀胱がん・子宮体がん・子宮筋腫などの良性子宮腫瘍、2020年には胸腺摘除・膵臓がん・腎盂形成術・骨盤臓器脱手術が保険適応となりました。すなわち、泌尿器科だけではなく消化器外科・呼吸器外科・婦人科・心臓血管外科など多くの診療科でロボット手術が保険適応となっています。
当院では2022年1月にロボット手術センターを新設しました。多くの診療科においてロボット手術の拡充を図るとともに、看護師、臨床工学技士、事務部門など関係部署の連携と調整体制を強化するためです。その目的は安全にロボット手術を導入することにあります。手術を受ける患者さんに危険が及ぶことがないように関係部署が緊密に連携をとり、導入前のシミュレーションを繰り返し行い、手術前後で疑問点や不備な点を抽出し、それを解決しながら円滑な導入ができるように手助けすることがこのセンターの使命であると思っています。

ロボット手術センター長
川西 泰夫

前立腺・腎臓・膀胱がん

高松赤十字病院 泌尿器科では、平成25年7月17日より「ダヴィンチ」を使用した前立腺がんの手術を開始し、現在はその他に腎臓や膀胱がんの領域においてもダヴィンチによる手術を行っています。また平成30年12月にはダヴィンチXiに更新いたしました。なお、前立腺・腎臓・膀胱がんのダヴィンチ手術は健康保険が適応されます。

ダヴィンチ手術とは、これまでの腹腔鏡手術(開腹せずに内視鏡を体内に挿入して行う手術)にロボット支援技術を加えた術式です。従来に比べて広い視野や3D画像、手振れ補正機能などの特徴があり、より正確で細かい作業を行えるようになりました。

手術支援ロボット「ダヴィンチXi」

ダヴィンチ手術 症例数

症例 症例数
前立腺がん(平成25年より開始) 1228例
腎臓がん(平成26年より開始) 289例
膀胱がん(平成28年より開始) 138例
骨盤臓器脱(令和1年より開始) 51例
腎盂尿管移行部狭窄症(令和2年より開始) 34例
副腎部分切除 9例
後腹膜リンパ郭清 5例
腎尿管全摘 18例
その他 7例
合計 1779例

2023年12月31日

前立腺・腎臓・膀胱がんの
ダヴィンチ手術に関するお問い合わせ
平日 15時以降
087-831-7101(代表)
泌尿器科外来までご連絡ください。

胃がん

香川県初!「ダヴィンチ」で胃がんの治療は新たなステージへ

2017年12月、高松赤十字病院では香川県下で初めてとなる、最先端の手術支援ロボット「ダヴィンチ」を用いた胃がんの手術を開始しました。

第一消化器外科部長 石川 順英

局所の病気は手術で治します

胃がんの外科的治療には、いくつかの選択肢があります。2cm以下の早期がんでリンパ節に転移が見られないケースでは、「内視鏡的切除」という胃カメラで表層だけを切除する方法があります。胃がそのまま残り、口から胃カメラを挿入して治療するため、患者さんのなかには「手術しないで治った!」というイメージもありますが、内視鏡的切除も手術のひとつです。 リンパ節に転移のある可能性がある場合には、がん細胞を確実に取り除くために、「リンパ節郭清(かくせい)※がん周辺にあるリンパ節を切除すること」に重点を置いて、治療方針を決めています。がん細胞はリンパ管を通ってリンパ節に転移する性質があるため、転移の可能性がある部分を確実に取り除いて再発を防いでいきます。

開腹手術と内視鏡手術

腹腔鏡下手術の様子

がんを治す可能性を高めるために重要なのは、リンパ節をしっかり切除すること。その標準的な治療は開腹手術です。ただ近年では、(ステージⅠの早期がんにおいては)内視鏡による「腹腔鏡(ふくくうきょう)下手術」も選択されることが多くなっています。開腹手術に比べて傷が小さいため、痛みや出血も少なく、入院期間も短くなるなど患者さんの負担を軽減できるメリットがあります。その患者さんにやさしい「腹腔鏡下手術」を行う上で、より便利で高度なツールとして導入されたのが、手術支援ロボット「ダヴィンチ」です。

最新の技術を搭載した「ダヴィンチ」

従来の腹腔鏡下手術では、鉗子(かんし)は、30cm程で真っ直ぐなため自由度が低く、手振れなどの影響も受けやすいため、手術を確実に行うためには熟練が必要であり、技術的なハードルがありました。しかし「ダヴィンチ」では、鉗子が多関節を備えているため術者の手の動きそのままに動かすことができます。操縦室のコントローラー上で手首を回す、つまむなどの手の動きに合わせて鉗子も動き、実際の視野とほぼ同じ3D画像が見られることや、コンピューター制御による手振れ防止機能など、最先端のテクノロジーによって繊細で正確な手術を行うことができるようになりました。

技術スキルを磨いていくために

ダヴィンチは高度なシステムがゆえに、扱い方の習熟や機械的なトラブルの対処など、導入に際しては十分な準備とトレーニングが必要です。当院では、ダヴィンチで執刀する医師は講習、トレーニング、手術見学などを含む一連の専門プログラムを修了して、ダヴィンチのCertificate(修了証明書)を取得しています。さらに、日本消化器外科専門医および内視鏡外科学会技術認定医の資格を取得していることを条件として、現在は3名のドクターが参加できる体制となっています。

合併症のリスクも抑えられます

今回、香川県で初症例となるダヴィンチを用いた胃がん手術を行いましたが、患者さんの術後の経過も非常に順調で、合併症もほとんどなく退院されています。ダヴィンチは小さな領域の細かい操作であればあるほどメリットがあると感じています。すい臓の周りにあるリンパ節を切除する場合も、従来であればすい臓を押さえる必要があったのですが、ダヴィンチであれば鉗子の自由度が高く繊細な動きができるので、すい臓を押さえることなくリンパ節にアプローチでき、もろい組織を引っ張るなどの動作でも傷をつけにくく、合併症のリスクも抑えることができます。先進的医療として行われた臨床試験では330例行われ、従来の腹腔鏡下手術に比べて合併症の発生率が半分以下になったというデータもあります。

最先端の治療が受けられる病院として

すでに泌尿器科、特に前立腺手術ではダヴィンチが従来の手術にとってかわるものになっており、当院でも前立腺がん、腎がんなどの手術で1000例以上の実績があります。大きな展開を必要とする手術では腹腔鏡の方がやりやすい場合もあったり、ダヴィンチには触覚がなかったりなど、ハード面での改良が必要な点もありますが、今後は医療機器の進歩と共に腹腔鏡下手術からロボット支援による手術にシフトしていくのは間違いありません。当院も香川県で初めて胃がんのダヴィンチ手術を行った医療機関として、これからも「最新の治療を受けたい」という患者さんの希望を叶えられる体制を整えていきたいと考えています。

胃がんのダヴィンチ手術に関する
お問い合わせ
平日 13:00~17:00
087-831-7101(代表)
外科外来までご連絡ください。

直腸がん

直腸がんダヴィンチ手術について

2018年9月より手術支援ロボット「ダヴィンチ」による直腸癌手術を開始しております。

直腸がんとは

肛門から約20㎝の腸管を直腸といいます。そこに発生するがんが直腸がんです。
(現在大腸がんの罹患率(発生率)は第1位であり、直腸がんは大腸がんの約35%を占めるといわれています。)
直腸がんの手術では、がんの組織や周辺のリンパ節などを残さず切除することが重要です。
直腸がんの部位により人工肛門が必要となることもあります。
一方、直腸のまわりには排尿や性機能をつかさどる重要な神経も近接しています。

がんの根治性、肛門温存、骨盤機能温存の高い次元での両立を目指して

当院では直腸がん手術に対しても腹腔鏡下手術を積極的に行っており、近年では開腹手術と比較して腹腔鏡下手術の割合が9割以上となっております。
腹腔鏡手術の最大の利点は拡大視効果であり、狭い骨盤内を拡大して観察することで肛門近くのがんまで肛門を温存した手術が可能となっております。
しかし、狭い骨盤内をまっすぐな鉗子(かんし)で操作するため、高度な技術を要します。
「ダヴィンチ手術」では、3Dフルハイビジョン画像による高解像度の立体的な画像に加え、人間の手の動きそのままに再現するロボットアームと手振れ防止機能により、狭い骨盤の中でも正確な操作が可能になりました。
それにより、がんの根治性を保ちつつ、肛門温存、排尿・性機能などの機能温存にも期待がもてるようになりました。

安全な手術のために

ダヴィンチは高度なシステムゆえに、扱い方の習熟や機械的なトラブルの対処など、導入に際して十分な準備とトレーニングが必要です。当院ではダヴィンチを執刀する医師は講習、トレーニング、手術見学を含む一連の専門プログラムを修了して、ダヴィンチのCertificate(修了証明書)を取得しています。

さらに、日本外科学会専門医および内視鏡外科学会技術認定医の資格を取得していることを条件として、現在は2名のドクターが参加できる体制となっています。

なお、直腸がんのダヴィンチ手術は健康保険が適応されます。

直腸がんのダヴィンチ手術に関する
お問い合わせ
平日 13:00~17:00
087-831-7101(代表)
病気やお体の具合によりダヴィンチ手術が適さない場合もあります。
外科外来までご連絡ください。

肺がん・縦隔腫瘍ダヴィンチ手術について

2018年11月より手術支援ロボット「ダヴィンチ」による肺がん・縦隔腫瘍手術を開始しました。同年12月からは、最新型「ダヴィンチXi」が導入され、本機種での肺がん手術(肺葉切除)の成功は香川県初となります。当院では順調に症例数を重ね、2019年5月には縦隔腫瘍、同年12月には肺がん(肺悪性腫瘍)の施設認定を受け、保険診療でのダヴィンチ手術が可能になりました。

肺がんに関して

肺がんは、がんの死亡原因の一位の疾患です。当院は呼吸器センターを立ち上げており、外科・内科・放射線科などで協力し、シームレスな医療が可能です。また、当院の禁煙外来や人間ドックなどで、予防と早期発見にも真摯に取り組んでおります。熟達した胸腔鏡手術に、更に「ダヴィンチ」が加わることにより、今まで以上に安全で根治的な手術を患者さんに提供できるようになりました。

一部の転移性肺腫瘍(他の癌からの転移)の肺葉切除にも「ダヴィンチ」は、保険適用があり、今後適用疾患は広がることが予想されます。

縦隔腫瘍に関して

心臓や食道、気管などの臓器がおさまる空間である縦隔(じゅうかく)内に発生した珍しい腫瘍であり、良性悪性問わず、「ダヴィンチ」の保険適用になっております。

ダヴィンチに関して

「ダヴィンチ手術」では、径8mmの3D高解像度カメラによる立体的な画像に加え、7つの関節を持つロボットアームと手振れ防止機能により、胸腔の中でも正確な操作が行いやすくなりました。
これにより、今まで以上にとるべき組織はしっかりとって、神経などは確実に残すといった細かい操作が可能となり、がんの根治性を保ちつつ、神経機能温存にも期待がもてるようになりました。これからも「最新の治療を受けたい」という患者さんの希望を叶えられる体制を整えていきたいと考えています。

肺がん・縦隔腫瘍ダヴィンチ手術のお問い合わせ

あくまで手術は、がん治療(根治)を安全に行うことが目的であり、患者さんは手術法をよく理解したうえで、望むべきと考えます。また、病気やお体の具合によりダヴィンチ手術が適さない場合もあります。当院には、4名の呼吸器外科専門医が在籍しており、お気軽にお問い合わせください。

肺がん・縦隔腫瘍のダヴィンチ手術に関する
お問い合わせ
平日 15:00~16:30まで
087-831-7101(代表)
通常業務も行っておりますが、可能な限り対応させていただきます。

良性疾患(子宮筋腫・子宮腺筋症)に対するロボット支援手術

婦人科領域のロボット支援手術では、良性疾患(子宮筋腫、子宮腺筋症など)や子宮体癌に対する子宮全摘術が2018年4月から、さらに2020年4月からは骨盤臓器脱(子宮脱、膀胱瘤など)に対する仙骨腟固定術が保険適用となりました
腹部に8mm程度の小さな穴を開け、人間の目を超える高解像度3Dカメラと、人間の手の可動域を超える多関節ロボットアームを挿入し、手ぶれのない繊細で緻密な手術操作を行うロボット手術は、国内の婦人科領域でも適応が広がっています。
当院では泌尿器科、消化器外科、呼吸器外科がすでにロボット手術を導入しており1000例を超える手術実績があります。当科では香川県内の産婦人科としては初めて良性疾患(子宮筋腫・子宮腺筋症)に対するロボット手術を導入致しました。

ロボット手術の様子
コントローラーを操作することで(左図)、ロボットアームに装着した鉗子が動く(右図)

当科ではこれまでも積極的に腹腔鏡手術を導入し、身体への負担の少ない低侵襲手術を目指して参りました。ロボット手術は拡大視野下に行う繊細な操作で、思い描いた通りの動きを実現することが可能です。出血量の減少や入院期間の短縮など、患者さんにとって更なる低侵襲手術を提供できることが期待されます。
骨盤臓器脱に対しても、当院泌尿器科と連携して積極的にロボット支援手術を導入しています。婦人科領域におけるロボット手術に関しては、当科外来にてお気軽にご相談ください。

お問い合わせ先(産婦人科外来)
(平日9:00~17:00)
087-831-7101(代表)

香川県初 2台目の手術支援ロボット(ダヴィンチXi)を導入しました!

高松赤十字病院は香川県内の病院で初めて、手術支援ロボット「ダヴィンチXi」の2台目を導入しました。

ロボット手術とは、これまでの内視鏡手術(開腹せずに内視鏡を体内に挿入して行う手術)にロボット支援技術を加えた術式です。従来に比べて広い視野や3D画像、手振れ補正機能などの特徴があり、より正確で細かい作業を行うことが可能です。
当院泌尿器科はで平成25年7月より、手術支援ロボット「ダヴィンチ」による前立腺がんの手術を香川県で初めて開始しました。現在では呼吸器外科、消化器外科の分野でもロボット手術を行っており、全体で1,200件以上の手術実績を重ねております。

今後、ロボット手術のニーズはますます高まっていくことが予想され、同時に希望する患者さんの増加に伴い手術待機期間が延伸するといった懸念も考えられます。そこで当院では、より迅速な手術提供に向けて、2台体制の整備を図りました。

私たちはこれからも、地域の皆さまに向けて安心で質の高いロボット手術を提供してまいります。
手術に関する詳細は、各外来または主治医にお問い合わせください。

ダヴィンチ手術 1000例達成しました

高松赤十字病院は平成25年7月より、手術支援ロボット「ダヴィンチ」を使用した前立腺がんの手術を香川県で初めて開始しました。現在では泌尿器科に加え、呼吸器外科、消化器外科の分野でもダヴィンチを用いた手術を行っております。

そして、令和2年4月にはダヴィンチ手術症例が合計1000件を達成し、このダヴィンチ手術の機器を販売しているインテュイティブサージカル社から記念盾が届きました。なお、1000件を超える手術件数達成は全国の病院で28施設であり、四国の病院では当院が初めてです(令和2年6月時点)。

これからも当院では、皆様へダヴィンチ手術を安全に提供してまいります。手術適応など詳細は、主治医にお問い合わせください。