高松赤十字病院 院長ブログ

うまげな患者塾

健康寿命を延ばす

今年の5月のGWの観光地はどこも人出が多かったようです。GW明けにコロナ患者が増えましたが、GW前と比べてはほぼ同じレベルで、少しずつ減ってきている感じです。オミクロン株のBA.2が主流となったものの、一方で3回目のワクチン接種が進んでおり、減少傾向が続くことが期待されます。下記にワクチン効果についての最近のデータを図にお示しします。


図1 年代別、コロナワクチン接種回数別のコロナ重症化率
(第80回新型コロナウイルスアドバイザリーボード資料・令和4月1月−2月、約12万人データより、西村改変)

ワクチン接種の3回目の効果は明らかです。現在3回目接種は65歳以上で85%以上、全体でも60%近くとなっています。新規陽性者数はまだ多いものの、重症者は徐々に減ってきています。コロナ禍の様相が変わってきているように感じています。

さて、本日は健康寿命について、少し説明いたします。


図2 平均寿命と健康寿命の推移(厚生労働省 健康日本21 参考資料より)

21世記に入ってから高齢社会が本格的に到来し、高齢者の健康維持が重要な政策課題となってきました。そこで政府は「健康日本21」という政策を進めています。単に寿命を延ばすのではなく、いかに健康であることを維持するか、が大きなテーマとなっています。歳を重ねても人の世話になりなくない、コロリと死にたい、などと考えている方は多いと思います。

さて、では健康寿命を延ばすためにはどういったことに注意を払ったら良いのでしょうか。政府が提唱している項目を医療者として総括すると次のような点が重要かと思います。

1)    生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底
2)    栄養、身体活動、飲酒、喫煙、歯・口腔の健康
3)    健康を支え、守るための社会環境の整備

生活習慣病にはがん、心臓病、脳卒中、慢性閉塞性肺疾患などが挙げられます。いずれの病気も発症予防はある程度可能とされている疾患です。むろん、どの病気においても遺伝的要因、環境要因などで不可避なものもあります。ただ、個人の努力で発症の確率を下げることは可能です。

栄養についてはカロリーオーバーによる肥満や糖尿病が注目されがちですが、タンパク質やビタミン類摂取も大変重要です。高齢になるにしたがい、筋肉量が減少しがちになり、そうなると転倒のリスクが上昇し、また病気となった時の回復力が弱くなるという欠点となります。肉、魚、大豆類など、積極的に摂取すると良いでしょう。身体活動も極めて重要です。歳相応の運動は最も大切な習慣です。筋肉量は使用しないと想像以上に早いスピードで減少します。廃用症候群と言って使わないと筋力が低下します。私の個人の経験ですが、40代後半にアキレス腱断裂のため、4週間ほどギプス生活となり片足がほとんど使用できませんでした。ギプスを取ったあと、大腿の周囲径が10cmほど細くなったのを見て、驚いたのを覚えています。少なくとも2−3日に一度はしっかりと歩行などの運動は必要です。飲酒はほどほどに、そして喫煙は百害あって一利なしです。歯・口腔の健康については20年ほど前から強調されるようになりました。口腔内は雑菌だらけです。ただ、通常は唾液や定期的な歯磨きなどで健康が保たれています。しかし歯周病をはじめ、種々の疾患が口腔内の菌が原因となっている可能性が指摘されるようになっています。最近では大きな手術前、がんの化学療法前などでは歯科衛生士による口腔ケアを行うことが常識となっています。歯の健康にも留意してください。

次の図は介護が必要となった主な要因を表したものです。認知症、脳血管障害、骨折などが主な要因です。これらをいかに減らすかというのは大変重要です。栄養バランス、認知症防止、歩行習慣、健診、定期受診など、できることは多くあります。これらを丁寧に励行し、健康寿命を延ばす努力をしてください。


図3 65歳以上の要介護者等の性別にみた介護が必要となった
主な原因(内閣府 令和3年度高齢者白書より)

今後、また機会をみて健康寿命を延ばすための工夫について説明させていただきます。
いつまでも健康でありたいものです。