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若年男性の勃起障害・勃起不全(ED)治療 ー手術で完治するケースもー

当院は若い男性の勃起障害(ED)治療に力を入れています  -多くの原因は血行障害-

勃起障害(ED)を悩む男性は少なくなく、特に20歳代や30歳代の若い男性の勃起障害は青春時代や結婚に影響を与え、人生を左右するほどの超重大問題です。

勃起障害の原因の20%は心因性ですが、残りの80%の患者さんには何らかの異常が認められます。膀胱や前立腺、直腸の手術後の神経障害の患者さんも少なくありませんが、最も多いのは血行障害によるもので若い男性の勃起障害の多くは単純な動脈障害です。

そこで、高松赤十字病院泌尿器科では特に若い男性の勃起障害の治療を積極的に行っています。
動脈性勃起障害であれば動脈バイパス手術によって完治することも夢ではありません。手術やカテーテルによる血管拡張で治療可能です。残念ながら全員の方が治癒するレベルには至っていませんが、ほとんどの人はなんとかなるレベル以上に復帰できます。

勃起障害(ED)の治療法 -若者へのED治療は薬以外の方法も-


①外傷性動脈性勃起障害の治療 【内陰部動脈に対する経皮的血管形成術(PTA)】

はじめに

陰茎に血液を供給する内陰部動脈に狭窄や閉塞が起こると、平常時や勃起時に十分な血流が得られず、陰茎海綿体機能障害や勃起障害が起こることがあります。
陰茎血流改善のためにバルンカテーテルという血管拡張用カテーテルを用いて狭窄あるいは閉塞した血管を拡張させる治療方法を、経皮的血管形成術(PTA:percutaneous transluminal angioplasty)といいます。

方法

①  このカテーテル治療は放射線治療室(血管造影検査室)で、放射線科医師が行います。局所麻酔を行い、太もものつけ根にある大腿動脈に針を刺します。ここからガイドワイヤーや血管カテーテルを挿入し、内陰部動脈の造影検査を行います。
②  内陰部動脈から陰茎血管にかけての造影検査を行い、治療可能な狭窄や閉塞病変があれば、PTA治療を行います。病変部位にガイドワイヤを通過させ、さらにバルンカテーテルが狭窄部位を通過できれば、病変部位の拡張を行います。バルンカテーテルの外径は0.75mmです。狭窄の程度が強いために、ガイドワイヤやバルンカテーテルが挿入できない場合は、治療が行えません。
③  拡張術が終了したら、最終の造影検査を行い、治療部位の確認を行います。その後、大腿動脈の穿刺部位から針を抜去し、同部位をしばらく圧迫止血します。止血が終了し、出血がないことが確認されたら、病室に戻ります。

検査や治療にかかる時間は2時間程度ですが、血管の状態や治療内容によっては、さらに時間を要する場合もあります。術後は大腿動脈穿刺部からの出血予防のため、3時間程度のベッド上安静が必要です。また術後は3日間、検査および治療をおこなった血管の攣縮(けいれん)を予防するために、血管拡張薬の点滴を行います。



起こりうる合併症

1.  穿刺部位の疼痛、出血、血腫形成:大腿(太もも)つけ根部分の穿刺部位に、処置後の疼痛が生じることがあります。ほとんどの場合は痛みは軽度ですが、程度が強ければ痛み止めを使用します。また、同部位に出血や皮下血腫を生じることがあります。これも通常は自然に改善しますが、程度が強ければ安静や圧迫止血、場合によっては止血処置が必要となります。
2.  血管拡張部位の出血、血腫形成:血管の狭窄部位は硬くなっていることがほとんどですので、この部分を拡げると多少なり血管に損傷が加わります。このため、皮下出血ができることがあります。軽度の出血なら経過観察し、自然に吸収されるのを待ちます。程度が強い場合には止血処置が必要となる可能性もあります。
3.  拡張部位の再狭窄:造影検査で同定された狭窄部位に対して拡張術が施行できても、術後の経過中に再狭窄を起こしてしまうことがあります。これにより自覚症状の悪化や超音波検査での血流低下などの所見が認められた場合には、再度の治療が必要となることがあります。
4.  血栓塞栓症:造影検査、治療に際しては、血液の凝固を予防する薬剤を使用します。しかしそれでも、検査治療中に血栓(血のかたまり)ができてしまうことがあります。血栓により脳梗塞や肺塞栓症などが生じる可能性もあります。血栓の吸引処置や血栓溶解薬を追加することがあります。
5.  血管内膜解離、動静脈瘻形成:狭窄部位の拡張治療により、血管の内面をおおっている血管内皮が損傷し、はがれてしまうことがあります(内膜解離)。また、近傍にある静脈との間に交通ができてしまうこともあります(動静脈瘻)。いずれもバルンカテーテルによる追加治療により改善することがほとんどですが、ときに損傷部位での血流障害を起こす可能性もあります。
6.  陰茎、陰部の違和感、疼痛:血管拡張処置の圧力が血管周囲の神経に影響し、陰茎や陰部の違和感や痛みを生じることがあります。ほとんどの場合は自然に改善しますが、程度により痛み止めなどを使用します。


②外傷性動脈性勃起障害の治療 【手術】

若い人の外傷性動脈性勃起障害に対する二つの治療のうち、手術について述べます。
これまでに170人以上の人が当院でこの治療をうけています。

高松赤十字病院では最新の高性能手術用顕微鏡が整備されておりますし、泌尿器科医のうち2名がマイクロサージェリー学会の会員です。年間10件程度の手術のうち8割は県外からの紹介患者です。北海道や東北地方、関東や九州など遠方からの患者さんもいます。若い人の勃起障害がいかに大変なことかはこのことからも想像いただけると思います。

手術のためには1週間程度の入院が必要です。手術の効果は感動的なものです。動脈損傷の程度や受傷からの期間、それによる海綿体障害の程度によって復活までの期間は異なりますが、血行が改善すればやがて勃起機能は復活します。数ヶ月で回復する人もありますし、数年かかって徐々に回復し正常化する人もあります。血管吻合部が閉塞しないようにすることが大切です。
血行再建に関しては入院費用の含めてすべて保険適応です。


正常な内陰部動脈

外傷により狭窄を生じた内陰部動脈


③中高年者の勃起障害治療 【薬物療法】

中高年者の勃起障害に対しては薬物療法が主体です。
バイアグラから始まったフォスフォジエステラーゼ阻害剤による勃起障害の治療はシアリス、レビトラと発展し安全な治療となっています。硝酸製剤との併用による事故はもはや報告が皆無といえるほどです。

しかし、中高年者の勃起障害発症は心血管疾患の重要なマーカーです。勃起障害発症から冠動脈疾患発症までの期間は約3年といわれています。このように中高年者の勃起障害発症は冠動脈疾患との密接な関連がありますので、高松赤十字病院では処方に際しては循環器科において適切な負荷試験を行い、虚血性心疾患を除外診断しています。
面倒だとお考えになる患者さんもおられますが安全な処方のためとご理解を頂いています。

メンズヘルス外来のご案内

高松赤十字病院泌尿器科では、毎週月曜日と火曜日の午後が男子性機能に関するメンズヘルス外来を行っています。
この外来は、男子性機能のうち特に勃起機能に関する問題に対応するためのもので、開設以来40年の歴史がある専門外来です。基本的な検査は超音波検査であり、この検査は外来で実施できる簡単で非侵襲的な検査です。

治療の方法が進歩し、現在ではどのような勃起障害でも「何とかなる」というレベルに達しています。
勃起機能障害は健康に関する重要な問題です。ぜひ、月曜日の午後と火曜日の午後の専門外来を受診してください。
かつては勃起障害の診療は保険適応外でしたが、厚生労働省は勃起障害を疾病として扱うことを承認し、薬物療法に関する費用はまだ自己負担ですが、いくつかの検査や治療が保険適応となっています。

メンズヘルス外来(月曜日火曜日の午後)のお問い合わせ先

高松赤十字病院 泌尿器科 までお気軽にお問い合わせください。

電話番号:087-831-7101(代表)

お問い合わせフォームはこちら

 

当院へのアクセス方法

当院のメンズヘルス外来には香川県内のみならず、関東・関西・中国・九州など県外の患者さんも多く来院されています。
当院へのアクセスは下記をご参考・目安に、ご来院ください。四国の玄関口である高松は本州・岡山からのアクセスが良く、当院は高松市中心部に立地してますので、高松駅からも徒歩圏内です。

飛行機をご利用の場合
羽田空港 → 高松空港 所要時間は1時間程度 
高松空港 → 当院へは高松空港リムジンバスをご利用いただき、県庁通り中央公園前を下車。所要時間は40分程度
県庁通り中央公園前バス停から当院へは徒歩3~5分程度

鉄道をご利用の場合
岡山駅 → 高松駅はJR快速マリンライナーをご利用いただき、所要時間は1時間程度
高松駅から当院へは徒歩で20~25分程度、車だと5~7分程度


表紙

なんがでっきょんな

vol.67

最新号

「高松日赤だより なんがでっきょんな」は、患者の皆さんに高松赤十字病院のことを知っていただくために、季刊発行する広報誌です。季節に合わせた特集や役立つ情報を掲載いたします。冊子版は、高松赤十字病院の本館1階の③番窓口前に設置していますので、ご自由にお持ち帰りください。左記画像をクリックすると、PDFでご覧になることもできます。

Take Free!

Columnvol.67の表紙のひと

当院音楽部

~つづけよう音楽を つながろう音楽で つたえよう音楽に乗せて~        今回の表紙を飾ったのは、当院音楽部の皆さんです。実は当院には職員間のコミュニケーションを図ることを目的に、様々な部活が活動しています。そんな中、脳神経内科 荒木部長が音楽で職種や世代を超えた交流の場を作りたいといった思いから、新たに音楽部を立ち上げました。医師や看護師、事務など50名を超える多職種職員が入部し、先日には第1回演奏会を市内のライブハウスで行いました。ピアノやギター、トロンボーン、サックス…etcと、様々な楽器を持ち寄って好きなジャンルの演奏を楽しみ、大いに盛り上がったそうです。 表紙写真は、その第1回目演奏会に参加した部員の有志に集まってもらい、当院本館北タワー12階の瀬戸内海が見渡せる場所をバックに撮影しました。共通の趣味を通してすっかり仲良くなった部員たち。楽器を手に、リラックスした表情で撮影に臨む姿から言葉じゃなく音楽で絆が強く繋がっていることが伝わってきました。 撮影後、代表の荒木部長はこれからも定期的な演奏会や懇親会を予定しており、いつか来院者に向けて演奏する機会も設けたい、と語ってくれました。今後の音楽部の活動、ぜひ注目してください!