新型コロナウイルス感染症の流行により、PCR検査を受けたことがあるという方も多いのではないでしょうか。今回のコラムでは、検査部に新しく導入されたPCR検査装置「FilmArray(フィルムアレイ)システム」を紹介します。
コロナ禍以前の感染症検査は、悪さをする細菌やウイルスを見つける力はPCR検査に劣りますが、10~15分程度で結果がわかるイムノクロマト法(写真1)と言われる検査方法が主流でした。PCR検査ができるのは大学病院や保健所といった限られた医療機関のみでしたが、コロナ禍によりPCR検査装置が爆発的に普及し、クリニックや診療所といった一般の医療機関でもPCR検査による感染症検査が受けられるようになりました。
今年の2月に導入された「FilmArrayシステム(写真2)」は、髄膜炎や重症の呼吸器感染症の原因となる、細菌やウイルスを調べるためのPCR検査装置です。この装置では、一度の検査で多くの細菌やウイルス(表1)を見つけることができます。検体採取が一回ですむため、患者さんへの負担も少ない検査となっています。
表1:「Film Arrayシステム」で一度の検査で見つけられる病原微生物の種類
髄膜炎・脳炎の検査
●大腸菌(細菌)
●インフルエンザ桿菌(細菌)
●リステリア菌(細菌)
●髄膜炎菌(細菌)
●B群溶血性連鎖球菌(細菌)
●肺炎球菌(細菌)
●クリプトコックス(細菌)
●サイトメガロウイルス
●エンテロウイルス
●単純ヘルペスウイルス
●ヒトヘルペスウイルス6
●パレコウイルス
●水痘・帯状疱疹ウイルス
重症の呼吸器感染症の検査
●アデノウイルス
●風邪コロナウイルス
●新型コロナウイルス
●インフルエンザウイルスA
●インフルエンザウイルスB
●パラインフルエンザウイルス
●RSウイルス
●ヒトライノウイルス/ヒトエンテロウイルス
●ヒトメタニューモウイルス
●百日咳菌(細菌)
●パラ百日咳菌(細菌)
●クラミジア ニューモニエ(細菌)
●マイコプラズマ ニューモニエ(細菌)
感染症の原因が細菌かウイルスかによって、治療に使われるお薬や対処方法が違ってきます。今までは、2~3日程度かかっていた検査結果が当日中にわかるため、「FilmArrayシステム」はより最適で早期な治療方針の決定に有用とされています。