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画像下治療の基本を学ぶ  IVRってどんな治療?


IVR=Interventional Radiology(インターベンショナル・ラジオロジー)は、体に負担の少ない治療法の一つとして1964年にアメリカで始まったとされ、20世紀後半から急速に発展・普及してきました。
日本では1970年代後半に肝臓がんの治療として始まったのを皮切りに、脳血管、心血管をはじめ対象となる範囲は今や全身に及んでいます。領域によってさまざまな呼び方がありますが、2014年10月に日本IVR学会がIVRの和名を「画像下治療」とすると決定しました。

IVRにできること


体内の「迷路」を正確にたどり内側から病巣を治療

画像下治療は、CTや血管撮影装置などの画像診断機器を応用したもの。多くの場合、体の表面からカテーテル(血管の中を通すチューブ)や針などの細い医療器具を体内に挿入して病気の治療を行います。
特長は、治療できる範囲が非常に幅広いこと。私たちの体内には10万キロにも及ぶ血管と、消化管や尿管など多くの管が張り巡らされていますが、こうした管の「迷路」を体の外から観察しながらカテーテルや針を走らせ、正確な部位に器具が到達したら、管の内側から治療を行います。
血管内からだけでなく、体表から体の奥にある病巣に針を刺して組織を直接焼却したり、溜まった膿にチューブを挿入して治療を行う手技もあり、こちらは「非血管系画像下治療」と呼ばれます。

適切な治療法を選びさまざまな疾患に対応
  

疾患にはそれぞれ適切な治療というものがあり、画像下治療が第1選択となる疾患から、手術や放射線治療など他の治療法が適切である疾患までさまざまです。主治医と相談しながら、最適の治療法を選択していきます。
その中で画像下治療が比較的よく用いられる疾患には、血管系では内臓動脈瘤や動脈性出血、動脈硬化による血管狭窄などの血管性疾患、肝がんや腎がん(術前処置)などの血管が豊富な腫瘍、非血管系では体の深部に溜まった膿などがあります。
主な手技には、内側から血管の詰まりを治す「血管形成術」、動脈瘤などが破裂しないよう内側に詰め物をする「動脈瘤塞栓術」、がんの成長に必要な血液が患部に届かないようにする「動脈塞栓療法」、臓器の奥深くにあるがん病巣に通じる血管から抗がん剤を注入する「動注化学療法」などが挙げられます。塞栓術は一時的に閉じるだけの処置と完全に閉じる処置を状態によって使い分けます。
救急診療においても、事故などで体内に出血がある場合、破裂している血管に迅速かつ確実にカテーテルを送り込み止血する治療ができます。また近年では、がん病巣に対する直接的な治療以外に、痛みを和らげたり栄養を補給するなどの緩和治療にも応用が広がっており、当院では動脈性勃起障害に対する血管形成術、リンパ瘻に対するリンパ管塞栓術などの新しい手技も始まっています。

体の負担が軽い!

画像下治療のメリットは、体を切らない、局所麻酔でできる、治療時間は多くは2時間程度で針を抜いた後も縫わなくてよいなど、患者さんにとって術中術後の体の負担が少ないこと。入院期間も数日程度であることが多く、外科的治療に比べて複数回の追加治療がしやすいのも長所と言えるでしょう。

デメリットを上回る治療効果 リスクも正しく理解しよう

血管撮影装置やCTはX線を発生させて体内を観察するため、放射線被ばくがあります。通常、医療機関で使用するX線診断機器から受ける線量で人体に障害が発生することはありませんが、画像下治療は治療手技の難易度によってX線の照射時間が異なり、ごく稀に障害(多くは皮膚炎や脱毛など)の発生する可能性があるレベルまで被ばく線量が上昇する場合があります。これが許容されているのは、被ばくによる障害リスクのデメリットを上回る治療効果を上げることができるためであり、もちろん障害が発生するレベルに達しない程度で最大の効果を上げる努力は常に欠かしません。
造影剤によってじんましんやぜんそくの発作、悪心、嘔吐やアナフィラキシーなどの反応が出るリスクについては、事前にきちんと患者さんに説明した上で施術に臨みます。ヨード造影剤との組み合わせで不具合が出るおそれがある糖尿病治療薬などは、短期間の休薬が必要な場合があります。以前の検査でヨード造影剤にアレルギー反応が出た場合は基本的にはヨード造影剤が使用できません。ただ検査薬のヨード造影剤にはいくつか種類があり、別な種類の造影剤を選ぶことで施術できるケースや、造影剤の代わりに炭酸ガスを使うなどの方法で撮影できるケースがあります。

「横のつながり」が当院の強み 専門知識を持つスタッフがサポート

高松赤十字病院では2018年4月に「総合血管治療センター」が開設され、放射線科、循環器科、脳神経外科などさまざまな領域の専門医が連携し、知識と技術を共有しながら、全身の画像下治療に対応しています。各専門医が協力して1人の患者さんのさまざまな部位の病巣に対応したり、救急現場で円滑な治療を行えるのが強みです。年間1700件ほどのカテーテル治療が行われており、放射線科だけでいうと2019年は475件、2020年は506件(血管系121件・非血管系385件)を手掛けました。
また、看護師や診療放射線技師、臨床検査技師などにも画像下治療に精通した専門家がそろっていて、よりハイレベルな手技が行えるのは大きな特長。いかに患者さんにわかりやすく伝えるか、患者さんのために何ができるかを常に考えながら、よりよい画像下治療体制整備を進めています。

IVRが活躍する主な疾患

❶血管形成術
カテーテルを通じてステントと呼ばれる金具を体内に送り込み、血管の狭くなっている部分で拡げて留置し、血流を確保する手技


❷動脈瘤塞栓術
動脈瘤が破裂しないよう、カテーテルを通じて内部に金属コイルを埋め込み、血流を遮断する手技


❸動脈塞栓療法
がんの進行を防ぐため、患部に1ミリ以下のマイクロビーズやゼラチンスポンジなどを注入して血流を遮断する手技。一時的なものと完全に閉じてしまう場合がある



第一放射線科 部長
外山 芳弘(とやま よしひろ)

画像下治療は縁の下の力持ち的な存在であり、患者さんが自分から希望することは少ない治療法ですが、体制も技術も整っていますから、安心して施術を受けてくださいね!


表紙

なんがでっきょんな

vol.57

最新号

「高松日赤だより なんがでっきょんな」は、患者の皆さんに高松赤十字病院のことを知っていただくために、季刊発行する広報誌です。季節に合わせた特集や役立つ情報を掲載いたします。冊子版は、高松赤十字病院の本館1階の③番窓口前に設置していますので、ご自由にお持ち帰りください。

Take Free!

Columnvol.57の表紙のひと

令和3年4月 ヘリポート運用開始

当院本館北タワー屋上に設けているヘリポートを令和3年4月より運用しています。表紙の写真は、運用に向けた訓練の模様です。離島からのヘリ搬送は一旦、他の場外離発着場に着陸→救急車で当院に運ばれていました。ですが、当院ヘリポートへダイレクトに搬送されることにより移送時間が10分程度短縮可能となりました。運用開始後の1カ月半の期間、3回の緊急搬送を受け入れています。今後、ヘリポートを活用して更なる救急医療体制の向上と災害拠点病院としての機能拡充を目指し、県民のいのちと安全をより一層守っていきます。(広報委員会 事務局)