さぬきの健康と元気をサポートする高松日赤だより

なんがでっきょんな

病院のこと病気・治療のこと

泌尿器科のロボット手術・レーザー手術 術後も生活の質を守る最新の手術事情

腎がん

腎臓は血液をろ過して尿をつくる機能を担う臓器。「腎細胞がん」「腎盂がん」などの区別がありますが、一般的に「腎がん(腎臓がん)」といえば腎細胞がんを指します。肺をはじめ骨や肝臓など他臓器に転移しやすく、初期はほとんど自覚症状がないため、転移が進んでから見つかることも。進行すると血尿や背中・腰・腹部の違和感や痛み、食欲不振、吐き気や便秘といった症状が現れます。

尿管結石

腎臓・尿管・膀胱・尿道などにある結石の総称。腰や脇腹、背中などに激痛を伴うことも。生活習慣の変化とともに増加傾向にあり、男性は7人に1人、女性は15人に1人が罹患するというデータも。石が小さければ尿とともに自然に排出されることもありますが、1カ月を超えても出てこなければ要注意。放置すると尿路感染症や腎機能の低下につながります。

膀胱がん

骨盤内の袋状の臓器。腎臓で作られた尿が一定量溜まったら、尿道を通じて体外に排出します。膀胱がんには「尿路上皮がん」「扁平上皮がん」「腺がん」などがありますが、多くは膀胱内部の尿路上皮にできる「尿路上皮がん」。60代以降に多く、男性患者が女性の4倍に上ります。再発しやすいのが特徴で、早期発見で治療した場合でも5年以内に3割程度は再発リスクがあるとされます。

前立腺肥大症

前立腺の細胞が増殖して大きくなり、尿道を圧迫して「尿が出にくい」「切れが悪い」「夜間のトイレが多い」など前立腺がんに似た排尿症状が現れますが、加齢とともによく見られる良性の病気です。前立腺肥大症から前立腺がんになることはありませんが、同時に罹患することはありえます。

前立腺がん

前立腺は精液の成分である「前立腺液」をつくる男性特有の臓器。膀胱の出口付近で尿道と直腸に接しています。前立腺の細胞が増殖して悪性腫瘍化したものが前立腺がんで、早期のうちは自覚症状が少なく、進行とともに「尿が出にくい」「排尿回数が多い」といった排尿症状や血尿・排尿痛・骨への転移などがみられるようになります。

四国でも有数の対応力 ロボット手術


極小のアームが術者の実際の手の動きを1/3スケールで再現

ロボット手術とは、手術支援ロボット「ダヴィンチ」を用いた腹腔鏡手術のこと。泌尿器科では前立腺がんをはじめ、腎がん・膀胱がんといったすべての尿路悪性腫瘍の根治手術に、保険適応下に行える治療となっています。当院は、2013年に香川で初めて泌尿器科にロボット手術を導入して以来、安全で質の高い手術を目指してきました。2019年からは2台体制となって手術までの待ち時間が短縮され、合併症のリスクを抑える努力もあって手術件数は順調に増加。現在までに1650件以上の実績を築いています。

ダヴィンチは高解像度の3D画像を撮影できるカメラや、人間には不可能な関節の動きで自由自在に操れる鉗子類など、複数のアームを備えています。執刀医がコントローラーで操作し、手ぶれ補正機能や動きを繊細にするソフトウェアが、精度の高い手術をサポートするため、きわめて繊細かつ安全な手術が可能です。

膀胱がん(年間対応件数 約25件)

膀胱全摘除術:膀胱をまるごと切除する手術

手術治療の場合、早期であれば尿道から内視鏡を挿入して腫瘍を切除する手術を行いますが、それだけでは切除しきれない・切除が難しい進行がんなどは、膀胱をまるごと摘出する「全摘除」が標準的。2018年からロボット手術が保険適用になり、現在は全国的にもロボット手術で全摘除を行う医療機関がほとんどです。

ロボット尿路変向術:膀胱全摘後に新しく尿路を確保する手術

膀胱の全摘除術を受けた場合は、尿を排出するための経路を新しくつくる必要があります。そのための手術を「尿路変向術」といい、腎臓からつながる新しい尿の出口(ストーマ)をおなかにつくる方法と、なくなった膀胱の代わりに腸の一部を袋状に整えて尿を溜めておける「代用膀胱」をつくる方法の大きく二つに分かれます。どの方法を選ぶかは、患者さんの状態や希望に応じて判断します。尿管を直接おなかにつなぐ「尿管皮膚瘻」や、腸の一部を尿の導管に使っておなかにつなぐ「回腸導管」は、尿を集める袋状のパウチをおなかに貼り付け、ある程度溜まったら処理する作業が伴います。

代用膀胱の場合は、外付けのパウチは必要ありません。中でも代用膀胱を自分の尿管につなぐ「自排尿型代用膀胱」は、それまでと同じように自然な排尿ができ、自分らしい生活を守りやすい方法。当院でも膀胱を全摘した患者さんの約半数が代用膀胱を選択しています。

ロボット尿路変向は体に易しい反面、難易度が高く時間もかかるため、膀胱全摘除はロボットでも尿路変向は開腹して行う医療機関が多いのが現状ですが、当院では四国でも珍しい「尿路変向にもロボット手術で対応できる」体制が確立。患者さんの負担が少ない治療法として、ロボットを積極的に活用しています。

 


腎がん(年間対応件数 約50件)

腎部分切除術:腎臓の一部を切除する手術


3Dによるシミュレーション画像。ピンクの部分が腫瘍、周囲の血管・血流がどう走っているかを色別に示している。

以前は全摘が主流でしたが、近年は腎機能が残るほど生存率も高くなることがわかっています。手術前に「どの血管を切ると、どの範囲の血流が止まるか」を3D画像でシミュレーションし、切除部分をなるべく少なくする・重要な血管を切らずに残す・手術中に血流を止めることによる影響を少なくする、といった「腎機能をできるだけ残す」方法を細かく検討。そのデータをダヴィンチと連携することで、より負担の少ない手術を実現しています。

前立腺がん(年間対応件数約130~150件)

前立腺全摘除術:前立腺をまるごと切除する手術


当院での手術件数が圧倒的に多い前立腺がん。年間130~150件に対応しています。ダヴィンチを導入したことで、全摘手術の際に括約筋を残しやすくなり、手術による根治とともに、尿禁制(自分の意思による排尿コントロール)の両立も可能に。術後の尿漏れに悩まされるリスクが大きく軽減されています。

出血・再発リスクともに軽減 レーザー手術

前立腺肥大症や尿路結石の治療に用いられるレーザーは、2024年10月に導入したばかりの、高出力を誇る最新鋭機種。細かい切り替えで適切な出力調節ができ、結石を割りやすい・止血しやすいといった強みを発揮しています。

尿路結石(年間対応件数100件)


黄色い塊が結石。青い器具の先端からレーザーを照射して結石を割り、バスケット型のカテーテルで破片を回収する。

水分をたくさん摂る・体を動かすなどで自然に石が排出されるのを待つ方法もありますが、それが困難だと判断される場合は、外科的な処置を行います。体の外から衝撃波を当てて結石を小さく割り自然に排出する方法と、尿道から内視鏡を挿入し、モニターで確認しながらレーザーで石を割る方法があります。レーザーを用いる場合は、砕いた石の破片をその場で回収して取り出すため、衝撃波を用いる方法に比べて治療効果が高いのが特長です。さらに現在当院に導入している最新鋭のレーザーは、石の場所や硬さによって細かく出力を調整でき、短時間の効率的な手術が可能。出血が少なく、石が残るリスクも軽減されます。




前立腺肥大症(年間対応件数 約40件)


肥大した前立腺の実の部分をはがして膀胱へ落とし込んだ後、内視鏡で刻みつつ摘出。

薬で症状の改善が見込めなければ前立腺をとる手術を行うことになり、術式は大きく「内側から少しずつ削る」「レーザーでくりぬく」「尿の通り道を広げる」の3つ。内側から削る方法は出血が多くきれいに取り切れないリスクも高いこと、尿の通り道を広げる方法は再発しやすいことから、当院では「レーザーでくりぬく」方法をお勧めしています。

前立腺はミカンに似た構造で、「皮」と「実」の部分に分かれます。皮と実をレーザーで丁寧にはがし、実の部分だけを膀胱内に落とし込んで、尿道を通れるサイズに刻みつつ摘出していきます。手術時間が長いのが難点でしたが、最新機器を導入したことで、2.5時間から1.5時間まで大幅に短縮されました。


泌尿器科部長 泉 和良(いずみかずよし)
「患者さんファーストで」
手術に不安を感じるのは当たり前のこと。安心して治療を受けていただけるよう、負担の少ない手術を追求しています。先進的な取り組みを続けてきた当院の泌尿器科の伝統とスピリットを受け継いで、患者さんファーストの治療を心掛けたい。毎年国際学会に出席してグローバルな知見を治療に取り入れ、AIを含めた最新技術も積極的に学びつつ、患者さん一人一人に合わせて「治る」だけではなく「生活の質」も守る適切な治療を目指します。

泌尿器疾患に関するお問い合わせは、高松赤十字病院泌尿器科外来へお気軽にお問い合わせください。 電話番号:087-831-7101(代表)


表紙

なんがでっきょんな

vol.75

最新号

「高松日赤だより なんがでっきょんな」は、患者の皆さんに高松赤十字病院のことを知っていただくために、季刊発行する広報誌です。季節に合わせた特集や役立つ情報を掲載いたします。冊子版は、高松赤十字病院の本館1階の③番窓口前に設置していますので、ご自由にお持ち帰りください。左記画像をクリックすると、PDFでご覧になることもできます。

Take Free!

Columnvol.75の表紙のひと

令和7年度新人看護師

今回の表紙は令和7年春に入職した新人看護師33名の皆さんです。真面目でしっかりとした方が多い印象で、当日も少し緊張しながらもスムーズに撮影することができました。日々の業務に加えて一年目は研修も多く、大忙しの毎日を過ごしています。患者さんに寄り添いながら一生懸命に学び、前向きに頑張る姿に、これからの成長への期待が膨らみます。