日本赤十字社 高松赤十字病院

人生100年時代を支える病院
高松赤十字病院 グランドオープン

人生100年時代を支える病院へ
~高松赤十字病院 グランドオープンを迎えました~

当院は1907(明治40)年に日本赤十字社香川支部病院として創立された、全国で6番目、四国では初の赤十字病院です。当時から、高松市中心部で地域医療の中核を担い、高度・専門的医療と安全・安心な質の高い医療の提供、災害時の医療救護活動などに努めてきました。100年以上にわたって地域とともに歩んできた中、老朽化した建物の刷新と耐震化のため、10年計画で大規模な建て替えに着手しました。2014年に中央診療棟を建設し、救急・検査部門を充実させたほか、20年には本館北タワーが完成し、病院機能の6割が一新しました。
新型コロナウイルスの感染対策として、旧病棟をそのままコロナ患者の隔離棟として活用したため、解体工事は当初の予定よりも1年以上遅れることとなりました。しかし、その後の工事は順調で、外構工事が全て終了し、令和5年6月17日にグランドオープンを迎えることができました。
約80台分の平面駐車場が増え、患者さんの利便性が大幅に向上したことに合わせて、災害拠点病院としての機能を一層強化するため、停電時の非常用電源を動かすオイルタンクを新設しました。非常用電源を3日間動かせる量の重油を備蓄しています。

新たな機器の導入・センター化の推進

心臓血管治療に使う血管造影装置、がん診療の検査に使うPET/CT、手術支援ロボット「ダヴィンチXi」など先進的な医療機器を導入し、患者さんの身体に優しく、かつ高度な治療を提供できるようになりました。2018年4月に開設した「総合血管治療センター」では、循環器系の疾患に対応。脳や心臓、腎臓を取り巻く血管の治療を、関係する複数の診療科が組織横断的に行なっています。本館北タワーの完成後は、外来も一体化して対応できる態勢が整っています。また地域ニーズの高い生殖医療(男性・女性の不妊治療など)を推進するため、「高度生殖医療センター」も整備しました。

人材育成にも力を入れています

建物や設備が病院機能を支えるハードだとすれば、ソフトは「人」。医師に関しては、若手医師が多く集まって、のびのびと診療することが重要です。10年ほど前から初期研修医の募集や教育に力を入れたところ、ここ数年は定員の2倍近い応募者が集まり、四国でもトップクラスとなるなど、近年では特に研修医の間で人気の高い医療機関の一つとなりました。10年前に比べると医師数は3割程度増え、若手を中心に院内全体が活気づいています。看護師の応募者も多く、優秀な看護師が集まっています。

超高齢化社会を迎える中、地域医療の中核として果たすべき役割

当院の診療の柱は、循環器疾患とがんの二つです。がんや心臓病、脳卒中は日本人の三大死因で、多くの高齢者が罹患します。これらに対し、高度な診療を行い、高齢者が早く回復できるような診療システムを構築しています。別の切り口で見ると、高齢者は元気に動いて健康でいることが大事です。当院は循環器疾患やがん診療に加え、筋肉・骨格系疾患の診療にも強みがあります。高齢者は病気から回復した後、寝たきりにならないためのリハビリが特に大切であることから、高度急性期病院の中でも当院は理学療法士、作業療法士を数多く配置しています。超高齢化社会では、患者さんの病気を治すだけではなく、回復の過程や患者さんの家族背景も配慮する「チーム医療」が大切になります。今後も医師や看護師、管理栄養士、理学療法士、作業療法士、医療ソーシャルワーカーなど患者さんに関係するあらゆるスタッフが連携し、「チーム」で患者さんを診ていきます。

何が変わった?高松赤十字病院 治療の柱

【がん治療】「PET/CT」「ロボット手術」など患者に優しい医療を提供

がんなどの状態を把握する上で欠かせない検査の一つが「PET/CT」検査です。高松赤十字病院では、2020年に最新型の半導体検出器を搭載したPET/CT装置を導入しました。最大のメリットは検出能力の向上で、従来機種では10ミリ程度の病変検出感度が5ミリまで検出可能となりました。病変が分かりやすくなり、がんの診断で有益な情報が得られるほか、早期発見にも役立ちます。検査時間も短縮され、通常は全身(頭から太ももの範囲)の撮像に30分ほどかかるが、当院では20分ほどで済み、患者さんの負担軽減につながっています。放射線治療では、21年から従来よりも放射線による副作用が少なく精度が高い「強度変調放射線治療(IMRT)」を開始しました。IMRTは正常組織の照射線量を抑えながら、主要部分に放射線を集中して照射できる技術です。治療計画をコンピューターで計算し、放射線を当てる範囲や線量の強さを細かく調節できるほか、正常な組織への照射を避けながら、多方向から集中的な照射が可能で、副作用を軽減させ、高い治療効果が期待できます。
手術治療では、13年に県内で最初に内視鏡手術を支援するロボット「ダヴィンチSi」を導入しました。18年に「Xi」に更新。21年からは2台を本格稼働させています。Xiは四つのアームに電気メス、カメラなどを備え、あらかじめ手術する場所を指示するとそこまでアームが自動で動きます。また、手術器具の鉗子(かんし)を装着したアームの関節が増え、長さも長くなったことで、アーム同士がぶつかって作業ができないというケースが減り、より柔軟でスムーズな手術ができます。
人間の手や目では対応できない極めて繊細な手術を、コンピューター制御のもとで精密に行えるのが、ダヴィンチの強みです。これまでは泌尿器科を中心に胸部・乳腺外科、消化器外科などで使われることが多かったが、22年からは産婦人科でも活用が始まりました。
ダヴィンチを活用した手術数は、23年3月末で1758件。これらの中でも、泌尿器科領域での手術症例数は1500件を超え、中四国でもトップレベルを誇っています。

がんの早期発見に役立つ「PET/CT」

高精度放射線治療装置

手術支援ロボット「ダヴィンチXi」

10室10ベッドある手術室にはBCRも完備

【循環器疾患治療】「総合血管治療センター」 複数の診療科が一体的にサポート

血管は全身のさまざまな臓器に酸素や栄養を供給し、老廃物を運ぶ役割を持ちます。その血管が原因の病気は、脳(脳卒中など)や心臓(心筋梗塞、狭心症など)、腎臓に多く見られることから、治療を臓器ごとに分けるのではなく、「血管の病気」として捉え、複数の診療科をまたいでサポートする「総合血管治療センター」を2018年に設立しました。関係する複数の診療科と医療スタッフが、症状などの情報を共有化。それぞれ専門的な視点から意見を出し合い、診断から治療までワンストップで対応しています。
センターの運用後は、血管内治療が以前よりスムーズにできるようになり、患者さんの負担軽減につながっています。動脈瘤の治療でも、複数の診療科が連携して対応。治療では、血管に出来たこぶへの血流を妨げるステントグラフトをカテーテルで挿入、こぶに他の細い血管から血液が流れ込んでいる場合は、細い血管に血栓を作り血液の流れを防ぐ「コイル塞栓術」などを放射線科と連携して行います。
心臓の大動脈弁の開きが悪くなり、血液が流れにくくなる大動脈弁狭窄症では、開胸せずにカテーテルと呼ばれる細い管を太ももの付け根などから心臓まで通し、人工弁に置き換える治療法「経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)」に取り組んでいます。
TAVIは、開胸して心臓を止める従来の手術に比べて患者さんへの負担を軽減できるのが特長。TAVI治療用のカテーテルと手術台を組み合わせた「ハイブリッド手術室」で処置し、施術中に患者さんの状態が急変した場合、すぐにその場で外科手術へ切り替えられます。また、TAVI治療用の血管造影装置を導入しており、高画質の立体画像でカテーテルの動きや大動脈弁を確認しながら、正確で迅速な処置ができます。21年には、専門学会から毎年安定した手術実績を残す「専門施設」に県内で初めて認定。これまでの手術実績は200件以上に上ります。
脳卒中の治療では、放射線検査・治療装置「IVR-CT」を導入しました。正面と側面の2方向から同時に血管撮影が可能で、患者が移動することなくCT撮影も同時にできます。脳梗塞の急性期治療は、IVR-CTを使った脳血管内の血栓を回収する療法(血栓回収療法)を採用し、後遺症なく治るケースも見られます。

放射線検査・治療装置「IVR-CT」

血管造影を見ながら手術ができるハイブリッド手術室

【周産期医療】ハイリスク分娩に対応 母体と胎児の健康を守る

世界保健機構(WHO)が妊娠満22週から出産後7日間と定義している「周産期」。この時期は、合併症妊娠や新生児仮死など母体や胎児の生命に関わる事態が発生するリスクが高まるとされています。1907(明治40)年の病院創設時から設置された産婦人科は、100年以上にわたり地域の周産期医療の根幹を担い、地域周産期母子医療センターにも認められており、年間700件前後の分娩に対応しています。近年は高年初産婦(35歳以上で初めて出産に臨む産婦)の割合が増加傾向にあり、出産時年齢が上がると、妊娠糖尿病や子宮筋腫合併妊娠、前置胎盤、妊娠高血圧症候群などの割合が増えることが分かっています。
当院では、早産(妊娠22週から37週未満)や低体重児(2500グラム未満)の出生に備え、産婦人科と小児科で妊娠中から情報共有するなど、他の診療科と連携した高度な医療を提供しています。緊急で帝王切開を行う場合も麻酔科としっかり連携し、母体と胎児両方の健康を守れるように素早く適切な対応を心がけています。
2020年の新棟完成に合わせ、産科病棟や新生児集中治療室(NICU)などを機能的に配置しました。新棟では、産科と婦人科をそれぞれ5階と7階に完全に分離し、患者のプライバシーに配慮したほか、5階には「LDR」という陣痛から分娩、回復室が一体となった個室を新設。患者はLDRで陣痛(Labor)から分娩(Delivery)、回復(Recovery)まで一つの部屋で過ごすことができるため、万全な医療態勢の下、家族とともに安心して出産に臨むことができます。
NICUは現在、3室を運用しています。早産児などの成長を促すケアに配慮し、音や光の刺激を緩和するなど胎内に近い環境をつくっています。また、元気な子であれば母子同室が出産の日から可能で、赤ちゃんと24時間一緒に過ごすことができます。個室以外の病室も1部屋のベッド数は3床までとし、少しでもゆったりできるように配慮。新生児預かり室や授乳サロン、保健指導室なども備え、総合的に育児をサポートする態勢を整えています。

陣痛室から分娩、回復室が一体となった個室「LDR」

新生児預かり室なども備え、総合的に育児をサポート

【生殖医療】高度な不妊治療を提供 夫婦同時の診療や治療も可能

当院では2018年に生殖医療センターの運用を開始しました。排卵誘発やタイミング療法、人工授精などの一般的な不妊治療に加え、体外受精や腹腔鏡手術といった高度生殖医療を展開しています。現在は「高度生殖医療センター」として、女性、男性不妊のいずれにも対応するなど、不妊治療に注力しています。
不妊の原因はさまざまです。排卵障害や卵管障害などのほか、近年は不妊の半数近くは男性の精子の数や運動率の低下が原因とされていますが、明確な理由が分からないケースも多いです。
女性の治療は、最初に子宮や卵巣に病変がないかなどを検査します。それでも原因がわからない場合は、性交を排卵日に合わせるタイミング治療法や服薬、注射で排卵を起こす排卵誘発法、人工授精を行います。それでも妊娠しない場合に、体外受精や腹腔鏡手術へ移行します。また、男性の不妊治療にも対応できるよう泌尿器科と連携しています。精子がほとんどない無精子症の場合、全身麻酔で精巣を切開して精子を採取する「顕微鏡下精巣内精子採取術」を泌尿器科専門医が行うなど、夫婦同時に診断や治療をすることができます。
がんや自己免疫疾患の患者が治療によって将来の妊娠や出産の可能性が低下する前に、治療後でも妊娠や出産の可能性を残せるよう、妊娠する力(妊よう性)を温存する「妊よう性温存治療」にも積極的に取り組んでいます。県内では初めて「医学的適応による未受精卵子、胚(受精卵)及び卵巣組織の凍結・保存」ができる施設として認定を受けました。女性の場合は、がん治療前に受精卵や未受精卵子の凍結保存を行います。

高度生殖医療センターで勤務するスタッフ
高度生殖医療センターで勤務するスタッフ

【グランドオープン】敷地内駐車場の追加整備・オイルタンク新設

グランドオープンの目玉の一つが、平面駐車場の追加整備。78台分を新設し、うち10台分は身体障害者用として確保したほか、身体障害者用は病院入り口付近に設け、そこまでの通路には新たに屋根も設置しました。追加整備で敷地内駐車場は計291台(うち身体障害者用計22台)となりました。なお、外来患者は隣接の香川県番町地下駐車場も4時間10分まで無料で利用できます。
また、当院は災害時に地域で被災した傷病者を受け入れる災害拠点病院として、本館北タワーは免震構造を採用しています。非常用電源は水没しないよう同タワー11階に移設し、外部から引き込む電力を2系統に分けて停電のリスクを低減するなどの災害対策を行なってきました。
更に、今回のグランドオープンに合わせ、停電時の非常用電源を動かすためのオイルタンクも新設しました。3日間非常用電源だけで運用できる重油を備蓄し、大規模災害時でも医療機能が維持できる体制が整いました。また、屋上にはヘリポートを設置しました。ヘリポートと手術フロアは専用のエレベーターで直接繋がっており、素早い運送・処置が可能です。

利便性が高まった平面駐車場
利便性が高まった平面駐車場

屋上にあるヘリポート
屋上にあるヘリポート

積極的な救急患者の受入・高い診療機能

【救急車の受け入れ台数】 年間で約4,000台

地域の急性期・高度急性期医療を担う中核として、救急車の受け入れ体制を整備。2014年に3000台を超え、21年には過去最高の約4000台を受け入れ、高松医療圏において最多の対応実績を誇ります。今後は救急体制だけでなく、一人一人の患者を迅速かつ的確に治療し、地域の医療機関や自宅療養へスムーズにつなげていくマネジメント力も高めていく方針です。

救急外来初療室
救急外来初療室

【大学病院に準ずる診療機能】 DPC特定病院群に指定

2018年から、急性疾患や重症患者向けの全国の急性期病院を「大学病院本院群」「DPC特定病院群」「DPC標準病院群」の3つに分類するカテゴリーのうち、大学病院に準ずる診療機能を備えた高機能な「DPC特定病院群」に指定されています。DPC特定病院群は全国で181医療機関あり、当院はそのうちの一つです。