日本赤十字社 高松赤十字病院

脳神経外科

基本情報

スタッフ紹介

スタッフ名 専門分野 認定医・専門医等

香川 昌弘

脳神経外科部長
(兼)総合血管治療センター副センター長
香川 昌弘
脳腫瘍
脊椎脊髄外科
脳卒中
顔面けいれん
三叉神経痛
日本脳神経外科学会専門医
日本脳卒中学会専門医・指導医
日本脊髄外科学会認定医
脊椎脊髄外科専門医

新堂 敦

脳神経外科副部長 新堂 敦
脳卒中
脳血管内治療
神経内視鏡手術
頭痛
日本脳神経外科学会専門医
日本脳神経血管内治療学会専門医・指導医
日本脳卒中学会専門医・指導医
日本脳卒中の外科学会技術指導医
日本神経内視鏡学会技術認定医
日本頭痛学会専門医

武澤 正浩

脳神経外科副部長 武澤 正浩
脳卒中
脳血管内治療
日本脳神経外科学会専門医
日本脳神経血管内治療学会専門医

小川 智也

医師 小川 智也
脳神経外科一般 日本脳神経外科学会脳神経外科専門医

福家 共乃

修練医 福家 共乃
脳神経外科一般

学会認定施設

  • 日本脳神経外科学会専門医認定制度にもとづく研修施設(連携・関連施設)
  • 日本脳卒中学会専門医認定制度による研修教育病院
  • 日本脳卒中学会認定一次脳卒中センター(PSC)
  • 日本脳神経血管内治療学会専門医制度研修施設

概要

脳神経外科で治療する疾患

脳神経外科は、中枢神経(脳と脊髄)と四肢の末梢神経の疾患を診療する科です。対象となる疾患は、脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)、脳腫瘍、水頭症、脊椎脊髄疾患、機能的脳神経外科疾患(片側顔面けいれん、三叉神経痛)、頭部外傷(急性硬膜外・硬膜下血腫、慢性硬膜下血腫)、頭痛などです。

脳神経外科疾患の症状

突然出現した激しい頭痛、半身麻痺、言葉の障害、視力・視野の障害、意識障害は脳卒中の可能性があり、すぐに救急車の要請が必要です。これらの症状が徐々に出現した場合には脳腫瘍や水頭症、慢性硬膜下血腫などの可能性があり、早期の受診を勧めます。また、意識障害や言葉の症状を伴わず、手や足のしびれ感や痛み、筋力の低下などがみられれば脊椎脊髄疾患、末梢神経疾患が疑われ、症状が強いときは受診が必要です。

受診の様子

診断方法

まずは侵襲性の低い神経診察、レントゲン検査、CT検査、MRI検査、超音波検査などから行い、必要であれば造影CT検査、造影MRI検査、脳血流検査、脳血管造影検査などを追加して、的確な診断を行います。

MRI検査

治療方法

正確な診断のもとに、手術、お薬による内科的治療、リハビリテーションなどを組み合わせて治療を行います。手術には、「手術用顕微鏡や内視鏡を用いた直達手術」、「カテーテルによる脳血管内治療」などがあり、個々の患者さんに合わせて最適な治療方法を選択しています。

治療方法""

JND参加について

当科は、日本脳神経外科学会データベース研究事業(Japan Neurosurgical Database:JND)が実施するデータベース事業に参加しています。詳しくは、こちら[PDF:360KB] をご覧ください。

詳細情報

特色

脳卒中に対する迅速な診断と治療

脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など)は、発症したら一刻も早く正確な診断および治療を行う必要があります。脳卒中は、24時間365日、いつ起こるかわかりません。高松赤十字病院脳神経外科では、発症したらできるだけ早く治療が行えるように、診療時間内のみならず時間外や夜間であってもすべての検査や緊急手術(直達手術および脳血管内治療)を迅速に行うことが可能です。

脳卒中に対する迅速な診断

進歩した脳血管内治療

脳血管内治療とは、足の付け根等にある血管からカテーテルという非常に細い管を挿入し、胴体から頚部、さらに脳内の血管までカテーテルを到達させ、様々な脳神経疾患の治療を行う方法です。直接頭部を切開して脳を触る必要がないので、脳にとっては優しく侵襲の少ない治療です。直達手術では困難な脳の深部にある病変に対しても、血管の中からであれば治療が可能となります。特に脳卒中診療にとってはなくてはならない必須の治療技術であり、脳梗塞やくも膜下出血(脳動脈瘤)、脳動静脈奇形、硬膜動静脈瘻などの脳血管疾患の治療に威力を発揮します。一部の脳腫瘍に対しても治療を行うことがあります。

進歩した脳血管内治療

当院では、2020年4月に最新の血管撮影装置が導入されました。これにより、従来から行っていた脳血管内治療がより迅速・正確・安全に行うことができるようになりました。日本脳神経血管内治療学会専門医制度研修施設でもあり、日本脳神経血管内治療学会指導医1名、専門医1名、修練医2名により治療にあたっております。
血管治療のページもご参照ください。

血管撮影装置

幅広い疾患への対応

脳卒中以外にも、脳腫瘍、水頭症、頭部外傷などに代表される脳疾患の診療から、頚椎および腰椎の変性疾患(椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症など)、脊髄腫瘍、キアリ奇形、脊髄空洞症などの脊椎脊髄疾患、さらには、顔面けいれんや三叉神経痛に対する機能的手術など、脳や脊椎脊髄疾患の診療を幅広く行っています。脳に限らず、脊椎脊髄疾患の手術でも顕微鏡を使用することでより安全確実に手術が可能であり、日本脊髄外科学会認定医により最小限の皮膚切開で最大限の効果が得られるような手術を行っています。また、強い腰痛や下肢の痛みを主症状とする腰椎椎間関節症候群や仙腸関節炎に対しては、椎間関節ブロック、仙腸関節ブロックを施行して、診断、疼痛コントロールを行っています。

頭痛外来

片頭痛や緊張型頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛などの一次性頭痛に対する診療も、日本頭痛学会専門医による正確な診断と適切な薬剤選択により丁寧に行っています。

手術用顕微鏡や内視鏡を用いた直達手術

脳神経外科で行う手術には非常に繊細な技術が要求されますが、以下のような手術機器やシステムにより安全で確実な手術を提供しています。

1.手術用顕微鏡や内視鏡
手術する部分を必要十分に拡大することで、非常に細かい部分まできれいに見ることができるため、正確・丁寧かつ安全に操作することができます。また、ICG蛍光血管撮影(蛍光を発する薬剤を注射して顕微鏡で確認する)を行うことで、正常血管の温存や病変の確認が可能です。

顕微鏡手術

2.ハイブリッド手術室
手術中に血管撮影やCT検査を行うことができます。正常組織の温存や病変の取り残しの予防、合併症の早期発見が行えます。

ハイブリッド手術室

3.ナビゲーションシステム
必要に応じて術前に準備し、MRIやCT画像の中でどこを操作しているのかを確認しながら手術を行います。手術野に見えていない部分でもナビゲーションの画面上で確認することができるため、手術操作に注意を要する部があらかじめ確認でき、病変の取り残しなどを防ぐことができます。

ナビゲーションシステム

4.神経モニタリング
脳や脊髄など神経の状態を手術中にリアルタイムで確認し、脳や脊髄の術中におこる異常を早期に発見します。

神経モニタリング

5.術中超音波検査
手術中に直接脳を超音波で確認することで、病変の位置や大きさが正確にわかります。

その他、頭部の手術の1つの問題点は、頭髪の剃毛です。当科では、原則、頭皮の切開線のところだけを剃毛して手術を行っていますので、術後から手術創が目立たず、早期の社会復帰に寄与しています。

診療実績

2008~2020年 入院および脳卒中患者数

入院および脳卒中患者数
※( )は、入院患者における脳卒中患者の占める割合

2009~2020年 手術件数

手術件数

脳や神経に関連する症状

非常に急ぐものと、そうでないものがあります。以下の基準を参考にしてください。

すぐに受診すべき症状は

  • 意識がない、呼びかけても返事しない
  • ハンマーで殴られたような突然の頭痛
  • 早朝に頭が痛くて吐き気がする
  • 急に、頭痛がして目が回る
  • 急に、手足に力が入らなくなった(ものを落とす、歩行がふらつく)
  • 急に、片目が見えない(真っ暗)、視野が欠けている
  • 急に、ろれつが回らない、言葉が出ない
  • 急に、ものが二重に見える、視力が落ちた
  • けいれん発作
  • 頭部の大きな傷、出血

あまり急がない症状は

  • 徐々に頭が痛くなった
  • 顔や歯茎に触れると強い痛みが出現
  • 片側の顔がぴくぴくする、ひきつる(けいれんする)
  • においがわからない
  • 手足がしびれる(ジンジン、ピリピリする、触った感覚が鈍い)
  • 徐々に手足に力が入らなくなった
  • なんとなく字を書きにくい、箸でものをつかみにくい、時に落とす
  • 時々、つまずいたり、転んだりする
  • 手や足を柱や壁によくぶつける
  • 耳が聞こえない、キーンなどの高い音の耳鳴りがする
  • 物忘れが強くなった、トイレが間に合わなくなった

脳神経外科で治療する疾患の紹介

1.脳卒中(脳血管障害)

ある日突然、手足が動かなくなる。言葉がしゃべれない。目を覚まさない。脳卒中は、突然やってくる脳の重大な病気です。脳の血管が詰まったり裂けたりして起こるため、脳血管障害とも言われます。血管が詰まる「閉塞性の脳卒中(脳梗塞)」と、血管が破れる「出血性の脳卒中」とに分けられ、さらに脳梗塞は、血管が詰まる原因から「心原性脳塞栓症」、「アテローム血栓性脳梗塞」、「ラクナ梗塞」、「その他の脳梗塞」に分類されます。
出血性の脳卒中には、脳実質内に出血がおこる「脳出血」と、脳動脈瘤が破裂することが主な原因となり、脳のすきまであるくも膜下腔に出血が起こる「くも膜下出血」があります。
脳卒中により障害された脳は、残念ながら元通りにはなりません。よって、障害された脳の機能が失われることにより、様々な後遺症が残ってしまいます。後遺症の程度は様々であり、軽度であれば自力で日常生活が送れますが、重度であれば、生活する中で多くのことに対してサポートが必要になります。

図1 脳卒中の種類

1-1:脳梗塞(閉塞性脳血管障害)

発症から受診されるまでの時間が短いほど、治療の選択肢が多くなります。治療の中心は、抗血小板薬、抗凝固薬、脳保護薬などのお薬による「内科的治療」です。症状が出現してから4.5時間以内であれば、「急性期血栓溶解療法(アルテプラーゼ(tPA)治療)」が受けられる可能性がありますが、tPA治療前の検査に時間を要するため、約3.5時間以内に病院に到着する必要があります。また、比較的太い動脈が閉塞しているときには、「脳血管内治療(血栓回収療法)」が有効な場合があります。
発症から約2週間の急性期治療が終了すれば、再発予防の内科的治療が中心となります。また、これらの治療と並行して、入院早期からのリハビリテーションを行います。

1-1A:ラクナ梗塞

脳の表面にある太い動脈から枝分かれし、脳の中に入っていく細い動脈(穿通枝)が閉塞して発症する脳梗塞です。小さい梗塞で症状も軽いことが多く、内科的治療が中心になります。
MRI(拡散強調画像)では、急性期の脳梗塞は白く描出されます。急性期ラクナ梗塞(黄点線内)を認めます。

MRI(拡散強調画像)における急性期ラクナ梗塞(白い点)

1-1B:アテローム血栓性脳梗塞

動脈壁に、コレステロールや脂肪などが蓄積して動脈壁が肥厚するため、動脈が硬くなって屈曲・蛇行するようになり、動脈の内腔が狭くなる(狭窄する)ことを「動脈硬化」といいます。動脈硬化の原因は、加齢、高血圧、糖尿病、高脂血症(コレステロールや中性脂肪が高い)、心疾患、肥満、多量の飲酒、喫煙などとされています。動脈硬化によっておこる血管の変性のことを、アテローム(粥状硬化)といいます。

頭蓋内動脈のアテローム血栓性脳梗塞

脳の表面にある比較的太い動脈の内腔が動脈硬化により狭窄し、この動脈が灌流する領域に脳梗塞をきたします。まずは内科的治療を行いますが、症状が進行する場合などでは緊急に脳血管内治療による経皮的血管形成術を行うことがあります。

MRI(拡散強調画像):急性期アテローム血栓性脳梗塞
MRI(拡散強調画像):
急性期アテローム血栓性脳梗塞

MRAおよび黄枠内を拡大した3D-MRA:中大脳動脈の狭窄(黄矢印)を認めます
MRAおよび黄枠内を拡大した3D-MRA:
中大脳動脈の狭窄(黄矢印)を認めます

(1)急性期脳血管内治療(血管形成術)

急性期脳血管内治療(血管形成術)

脳動脈(中大脳動脈)に動脈硬化による高度狭窄が存在していましたが、狭窄部にできた血栓により閉塞しました(赤矢印)。狭窄部をバルーンカテーテルにより拡張し(緑矢印)、中大脳動脈の再開通が得られました。

(2)バイパス手術(浅側頭動脈-中大脳動脈吻合術)

脳梗塞急性期治療が終了した後、脳の血流が不足している場合には、将来の脳梗塞を予防する目的でバイパス手術(頭皮の血管を脳の表面の血管につなぐ)を行うことがあります。

バイパス手術(浅側頭動脈-中大脳動脈吻合術)

頭皮に存在する血管(浅側頭動脈(1))を、脳の血管(中大脳動脈(2))に吻合します((3)(4))。これにより、本来頭皮を栄養していた血流が脳を栄養することになり、不足した脳血流が増えて将来の脳梗塞の予防となります。

頚部頚動脈のアテロームによる脳梗塞

顎の下、のどぼとけの横あたりをさわると、ドクドクと拍動している動脈があります。「頚部頚動脈」という、脳に血液を送っている太い血管です。頚部頚動脈は、動脈硬化の影響をとくに受けやすい部分です。頚部頚動脈が動脈硬化により狭窄すると、脳への血流が不足したり、狭窄部が血栓により閉塞したり、狭窄部にできた血栓が脳に流れていって脳の血管を閉塞することにより、脳梗塞をおこします。
MRIで脳梗塞を認めます(黄点線内)。MRAおよび3D-MRAでは、頚部頚動脈に高度の狭窄を認めます(赤矢印)。

頚部頚動脈のアテロームによる脳梗塞

頚部頚動脈狭窄により脳梗塞の症状が急激に悪化する場合や、狭窄が高度(一般的には50~80%以上の狭窄、つまり血管の直径が正常の20~50%以下)の場合には、将来の脳梗塞を予防する目的で手術を行うことがあります。手術方法には以下の2つがありますが、それぞれに長所・短所があります。それぞれの患者さんにとってどちらの治療法が良いのかを十分に検討し、最適の治療法を選択しています。もちろん、患者さん自身のご希望も十分に尊重されます。

(1)頚部頚動脈狭窄症に対する内膜剥離術(CEA)

頚部頚動脈狭窄症に対する内膜剥離術(CEA)

全身麻酔をかけ、頚部を切開し、頚動脈を露出します。一時的に頚動脈を遮断し、頚動脈を切開し、プラーク(動脈硬化斑:黄矢印)を切除します。最後に動脈を縫合し、血流を再開して終了します。

長所
  • 直接プラークを除去できる、とくに後述するステントでは抑えられないような、もろく軟らかいプラークを直接切除できる
  • 治療方法の長年の歴史があり、今までに確立されている術式である
短所
  • 全身麻酔が必要であり、患者さんへの侵襲や負担が大きく、術後しばらく安静が必要である
  • 頚動脈のそばにある、のどや舌を支配する神経が傷害され、発声傷害、飲み込みの傷害、呼吸障害などがおこることがある
(2)頚部頚動脈狭窄症に対するステント留置術(CAS)

頚部頚動脈狭窄症に対するステント留置術(CAS)

カテーテルを足の付け根から頚部頚動脈の中まで誘導し、狭窄部に「ステント」という超合金製のチューブ(金網)をいれ、狭窄部を内側から拡張します。

長所
  • 局所麻酔で行うことができ手術時間も短く、直接頚部を切開して動脈をさわったりしないため、患者さんへの侵襲や負担が少ない
  • のどや舌を支配する神経などが損傷されることはない
  • 全身麻酔が困難な患者さんでも行える
短所
  • もろく軟らかいプラークの場合には、ステントの網目を通ってプラークの破片が脳血管につまり、脳梗塞をおこすことがある
  • 造影剤を使用する必要があり、造影剤アレルギーのある患者さんや腎機能の悪い患者さんには行えない

1-1C:心原性脳塞栓症

不整脈(心房細動)や心臓弁膜症などが原因で心臓の中に血の塊(血栓)が形成され、これが脳に移動して動脈が詰まることで発症する脳梗塞です。下肢の静脈に形成された血栓が、心臓の中に開いた孔(卵円孔など)を通って移動し脳血管に詰まることでも起こります。ラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞よりも重症になることが多く、重度の後遺症が残ります。内科的治療を行いますが、発症からの時間が短く脳梗塞が完成していない等の条件を満たせば、緊急に脳血管内治療(血栓回収療法)を行うことで、重度の脳梗塞を回避できる可能性があります。

MRI(拡散強調画像):急性期心原性脳塞栓症
MRI(拡散強調画像):急性期心原性脳塞栓症

急性期脳血管内治療(血栓回収療法)

急性期脳血管内治療(血栓回収療法)

脳動脈(中大脳動脈)に、心原性脳塞栓による閉塞を認めました(赤矢印)。血栓回収用のステントおよび吸引カテーテル(黄点線内)により血栓を摘出し、中大脳動脈の再開通が得られました。一番右は回収された血栓です。

1-2:くも膜下出血

脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血

脳を栄養する動脈に風船のようなふくらみができることがあり、これを「脳動脈瘤」といいます。くも膜下出血の原因として最も多いのは、この脳動脈瘤の破裂です。脳動脈瘤ができただけでは無症状のことが多いですが、破裂すると、その瞬間に激しい頭痛が起こります。重症であれば、意識障害、片麻痺などをきたし、突然死することもあります。脳動脈瘤からの出血は一時的に止まることが多いのですが、いずれ再破裂(再出血)をおこします。再破裂すると状態がさらに悪化しますので、再破裂を予防するために緊急手術が必要です。手術には、開頭して行う「クリッピング術」と、カテーテルによる「脳血管内治療(コイルによる脳動脈瘤塞栓術)」があります。脳動脈瘤の処置を終えても、最初の出血により脳が痛んでいますので、手術後は集中治療室で厳密な管理と濃厚な治療が必要です。特に、脳血管が細くなる「脳血管攣縮」や、頭蓋内に脳脊髄液が貯留する「水頭症」をきたすことがあるので、早期に発見・診断し対処します。
最近では、頭部のMRI検査などで偶然に破裂していない「未破裂の脳動脈瘤」が見つかることがあります。特に脳ドックでは1-2%の割合で未破裂動脈瘤が見つかりますが、全てを手術する必要はなく、脳動脈瘤の大きさや形状、その部位、年齢、全身状態によって手術を行うか経過をみるかを検討します。また、脳動脈瘤が大きくなると、破裂していなくてもいろいろな神経症状がおこることがあります。頭痛、複視(ものが二重にみえる)、視力の低下、視野が狭くなる、など、動脈瘤の場所によって様々です。症状がある場合には、手術が必要となります。
手術方法には以下の2つがありますが、それぞれに長所・短所があります。それぞれの患者さんにとってどちらの治療法が良いのかを十分に検討し、最適の治療法を選択しています。もちろん、患者さん自身のご希望も十分に尊重されます。

(1)脳動脈瘤クリッピング術

脳動脈瘤クリッピング術

脳血管撮影で脳動脈瘤(黄矢印)が発見されました(1)。全身麻酔をかけ、頭皮を切開して頭蓋骨をはずし、手術用顕微鏡を使って脳のすきまから脳動脈瘤に到達します(2)。脳動脈瘤に1-2cmくらいの大きさの「クリップ」をかけ、瘤をつぶしてしまうことにより破裂を予防します(3)。ハイブリッド手術室では、手術中にクリップの状態を確認できます(4)

長所
  • 顕微鏡を使用し、脳のすきまから直接脳動脈瘤を観察できる
  • 治療方法の長年の歴史があり、確立されている術式である
  • 正常血管内にコイル等の異物がないため、術後の血栓塞栓症(異物に血栓がついて脳梗塞をきたす)がおこりにくい
短所
  • 開頭し、脳を分けて手術するため、脳への侵襲や負担が大きく、術後しばらく安静が必要である
  • 脳深部にできた脳動脈瘤は手術が困難である
  • 重症くも膜下出血では脳が強く腫れていることが多く、手術ができないことがある
(2)-1脳血管内治療(脳動脈瘤塞栓術)

CT検査でくも膜下出血を認めました

突然の頭痛で発症した患者さんです。CT検査でくも膜下出血を認めました(黄点線内、白い部分が出血)。同時にCT血管造影を行い、脳動脈瘤が確認されました(黄矢印)。

脳動脈瘤を内側より閉塞します

緊急に脳血管内治療を行いました。カテーテルを足の付け根から脳動脈瘤(黄点線内、黄矢印)の中まで誘導し、プラチナ製の「コイル」という細い金属糸を何本も入れることで、脳動脈瘤を内側より閉塞します。

長所
  • 開頭したり、脳に直接触れたりしないため、侵襲や負担が少ない
  • 脳深部にできた脳動脈瘤でも治療可能である
  • 重症くも膜下出血で脳が強く腫れていても治療可能である
短所
  • 脳動脈瘤に入れたコイルが圧縮されることなどにより再発することがあり、再治療を要することがある
  • 脳動脈瘤が再発していないかどうか確認するため、半年-1年に1回ほどの割合で検査が必要である
  • コイルは人体にとって異物であるため、詰めたコイルに血栓が付着し、脳梗塞の原因となる
(2)-2脳血管内治療(ステント併用塞栓術)

脳動脈瘤(黄点線内、黄矢印)の入口が広い場合、ステント(緑矢印)を併用して留置したコイルが正常脳動脈内に出ることを防ぎ、コイル塞栓を行います。

脳血管内治療(ステント併用塞栓術)

くも膜下出血をおこすその他の疾患

破裂脳動脈瘤以外のくも膜下出血の原因として、「脳動静脈奇形」や「硬膜動静脈瘻」などがあります。治療方法には開頭による摘出術、脳血管内治療、定位放射線治療(ガンマナイフ、サイバーナイフ)がありますが、特に脳血管内治療が有効な治療法となります。患者さんに応じて適する治療方法が違いますので、これらの治療方法組み合わせて最適な方法を選択します。

硬膜動静脈瘻

硬膜動静脈瘻は、脳をつつんでいる硬膜という膜および硬膜の中を走行する静脈洞の病変です。眼の奥の海綿静脈洞という部分にできれば、眼球突出、結膜充血、眼球運動障害による複視、頭痛・顔面痛等がおこり、後頭部にできれば耳鳴り、視野障害、頭痛等が起こります。頭蓋内の血管に血液が逆流すると、脳卒中のときと同じような様々な脳の症状や、脳出血をおこすこともあります。

海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻に対する血管内治療

異常な血管が海綿静脈洞部(赤点線内)に多数つながり、脳内(赤矢印)や眼球(黄矢印)に逆流しています。治療しないと脳出血を起こす可能性があります。コイルで異常な静脈洞を閉塞し、完全閉塞となりました。

海綿静脈洞部硬膜動静脈瘻に対する血管内治療

中頭蓋窩の硬膜動静脈瘻に対する血管内治療

中頭蓋窩の硬膜動静脈瘻に対する血管内治療

巨大な脳出血およびくも膜下出血により発症した患者さんです(赤矢印)。脳血管撮影で、硬膜動静脈瘻を認めました(赤点線内)。マイクロカテーテルから特殊な液体塞栓物質(ONYX, 黄点線内)を注入し、異常な血管を閉塞しました。

1-3:脳内出血

脳内出血の主な原因は高血圧症です。小さい出血(血腫)に対してはお薬や血圧管理を中心とした内科的治療を行いますが、大きな血腫で意識障害や重篤な神経症状を認めるときには、救命や神経症状の改善を目的として手術による「血腫除去術」を行います。ただし、手術を行っても出血によって壊れた脳組織が回復することはありませんので、言葉の障害や手足の麻痺などの後遺症が残ります。後遺症の軽減を目的として、術後早期からリハビリテーションを行います。

また、若年者では、脳動静脈奇形や硬膜動静脈瘻が原因となることがあります。治療は前項をご参照ください。
CT検査では、脳出血は白く描出されます。(A:被殻出血、B:視床出血、C:脳幹出血)

脳内出血

内視鏡下血腫除去術

内視鏡下血腫除去術

顕微鏡や内視鏡を用いて血腫を除去します。

2.脳腫瘍

脳や脳から出ている神経、脳をおおう組織(硬膜)、ホルモンを分泌する脳下垂体など、頭蓋内の組織からできるできもの(新生物)を脳腫瘍といいます。脳腫瘍は、増大する速度が遅い「良性脳腫瘍」と比較的短期間で増大する「悪性脳腫瘍」に大別され、治療方針、手術法などが異なります。また、肺癌など体部にできた癌細胞が血流によって脳に運ばれてきて脳内に腫瘍を形成する転移性脳腫瘍もあります。脳腫瘍による症状は、腫瘍の種類、その部位や大きさなどによって異なりますが、代表的な症状には、頭痛や嘔気、けいれん発作、手足の麻痺、しびれ、言語障害、視野障害、ホルモン異常などがあります。
脳腫瘍に対する治療は、腫瘍の種類などによって異なりますが、「腫瘍摘出術」、「放射線治療」、「化学療法」の組み合わせとなります。一般に、良性脳腫瘍に対しては、腫瘍摘出術を行い、経過などにより放射線治療(ガンマナイフ、サイバーナイフ治療など)を考慮します。悪性脳腫瘍に対しては、腫瘍摘出後に放射線治療と化学療法を追加します。症状を出していない小さい良性脳腫瘍(無症候性脳腫瘍)では、すぐには治療をせず、定期的な頭部CTまたはMRI検査で経過観察を行うこともあります。

脳腫瘍

造影MRI検査では、脳腫瘍が白く描出されています。
A:前頭葉の悪性脳腫瘍(神経膠芽腫)、B:多発する良性腫瘍(髄膜種)、C:転移性脳腫瘍(癌の脳転移)

脳腫瘍に対する直達手術

脳腫瘍に対する直達手術

造影MRIで、悪性脳腫瘍(神経膠芽腫)を認めました(黄矢印)。顕微鏡、術中モニタリング、ナビゲーション、術中超音波検査を駆使して腫瘍を摘出し、術後放射線治療を行いました。

脳腫瘍に対する脳血管内治療

左は三叉神経にできた神経鞘腫、右は大脳運動野にできた海綿状血管腫です(黄矢印)。いずれも良性腫瘍であり、手術により全摘出でき、症状も改善したため、追加治療は行わず経過をみています。

脳腫瘍に対する脳血管内治療

髄膜腫など一部の脳腫瘍に対し、手術中の出血を少量にして手術を安全に行えるようにするため、手術前に腫瘍の栄養血管を脳血管内治療により閉塞します。

脳腫瘍に対する脳血管内治療

MRIで、大きな髄膜種を認めます(黄点線内)。脳血管撮影を行うと、強い腫瘍陰影(赤点線内、腫瘍を栄養する血管)を認めます。腫瘍の栄養血管までマイクロカテーテルをすすめ(黄矢印)、栄養血管を閉塞します。これにより手術中の出血を少量にし、安全に手術が可能です。腫瘍は全摘出されました。

3.頭部外傷

頭部を強く打撲した後に、意識障害や手足の麻痺、言葉の障害を認めれば、非常に緊急を要する状態です。頭部外傷による頭の中の出血(血腫)には、その部位によりいくつかの種類があります。CT検査で迅速に診断し、適切な治療方針さらには手術法(開頭血腫除去術)を決定します。頭部外傷の怖いところは、頭部を打撲してから数時間以上経過して、意識障害や手足の麻痺が出現する(大きな出血を生じる)可能性があることです。そのため、来院時のCT検査で異常がなくても、頭部打撲時に意識障害があった場合などには、経過観察のため数日間入院していただくことがあります。

急性硬膜外血腫に対する開頭血腫除去術

急性硬膜外血腫に対する開頭血腫除去術

頭部打撲により頭蓋骨骨折(赤矢印)がおこり、脳と脳を包む硬膜の間に出血しています。緊急手術により血腫を除去しました。

急性硬膜下血腫に対する開頭血腫除去術

急性硬膜下血腫に対する開頭血腫除去術

頭部打撲により、硬膜と脳の間に出血しています。緊急手術により血腫を除去しました。

慢性硬膜下血腫に対する穿頭洗浄術

頭部外傷後、脳の表面に少しずつ血腫が形成されることがあります。「慢性硬膜下血腫」という疾患であり、頭部外傷後1、2ヶ月してから頭痛や手足の麻痺、もの忘れを中心とした認知症様症状などが出現します。治療は、局所麻酔下に頭蓋骨に約1cmの穴をあけ、貯留している古い血腫を除去します。多くの場合後遺症を残さず治癒しますが、10-20%で再発(血腫が再貯留)し、再手術が必要になることがあります。
頭部打撲後しばらくして、硬膜と脳の間に血腫が形成されました(赤矢印)。穿頭血腫除去術により血腫を除去しました。

慢性硬膜下血腫

4.脊椎脊髄疾患

脊椎の変性疾患には、頚椎および腰椎椎間板ヘルニア、頚部および腰部脊柱管狭窄症があります。治療の基本は、安静や固定、鎮痛剤などの内服治療ですが、痛みや筋力低下などの症状が強いとき、または、症状が明らかに進行性のときには、手術による脊髄および神経の減圧を行います。頚椎においては、症状と画像所見から前方除圧術(ヘルニア摘出術、前方固定術)と後方除圧術(椎弓形成術、椎間孔拡大術)のどちらかを選択します。当科では、頚椎神経根症の症例に対して、円筒型の開創器を用いて顕微鏡下に後方除圧術(椎間孔拡大術)も施行しています。皮膚や筋肉への侵襲が低く、術後の頚部カラー固定もほとんど必要ありません。腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症に対しては、手術用顕微鏡を用いてヘルニア摘出術や後方除圧術を施行します。脊髄腫瘍、キアリ奇形1型、脊髄空洞症は稀な疾患ですが、神経症状を伴っていれば、腫瘍摘出術、大孔部減圧術、シャント手術を施行します。

脊椎疾患のMRI

脊椎疾患のMRI

A:矢印は、脊髄の前面にある脊髄腫瘍を示す。B:頚椎症性脊髄症のMRI。頚髄が2ヶ所で圧迫を受けている。
C:腰部脊柱管狭窄症のMRI。下肢にいく馬尾神経が2ヶ所で強い圧迫を受けている。

5.三叉神経痛や顔面痙攣

三叉神経は、脳幹からでる最も大きな神経で、顔面と口腔内の痛みや触れた感じを脳に伝える機能を持っています。三叉神経痛の症状は、顔面の一部に触れた時、話をしたとき、ものを食べた時などに顔面に出現する数秒間の非常に激しい電撃痛です。原因の大半は、三叉神経周囲にある屈曲蛇行した動脈による三叉神経への圧迫です。まれに、脳腫瘍が原因でよく似た強い顔面痛が出現することもありますが、詳細なMRIにて脳腫瘍の有無、原因血管の確認を行うことができます。治療には、(1)カルバマゼピンに代表される内服治療、(2)圧迫している動脈を三叉神経から遠ざける神経減圧術、(3)ガンマナイフ治療があります。症状が軽いときには内服治療が有効ですが、痛みが強くなると神経減圧術、または、ガンマナイフ治療が必要になります。

顔面神経は、顔面の表情筋の動きを司る神経です。顔面けいれんは、三叉神経痛と同様の機序にて、顔面の筋肉が勝手にピクピク、悪化するとギューっとけいれんを来たす疾患です。両側に出現することは非常に稀で、左右のどちらかに一方にけいれんが出現するため、片側顔面けいれんとも言われています。両側性に症状を認めるときには、眼瞼けいれんなど他の疾患を考えます。治療には、(1)薬物の内服治療、(2)神経減圧術、(3)ボトックス(ボツリヌス毒素)治療があります。ただし、顔面けいれんに対する薬物治療は、三叉神経痛に対する薬物治療ほどの有効ではありません。神経減圧術とボトックス治療には、それぞれ長所、短所がありますので、両者の特徴を十分理解して、治療方針を選択することが大切です。

特殊外来

曜日 外来 担当医師
月曜日午前 脊椎脊髄疾患 香川 昌弘
脳卒中 武澤 正浩
水曜日午前 脳腫瘍 香川 昌弘
脳血管内治療 新堂 敦
水曜日(第2・4週のみ)午後 頚動脈狭窄症外来(予約制) 武澤 正浩
木曜日午前 脳腫瘍・顔面けいれん 香川 昌弘
金曜日午前 脳卒中 新堂 敦
脳血管内治療 武澤 正浩
金曜日(第3週のみ)午後 頭痛肩こり外来(予約制) 香川 昌弘

地域の先生方へ

手足の麻痺やしびれ、言語障害、頭痛など脳神経外科疾患が疑われる患者さんに対しては、迅速に適切な検査や治療を行うことを心掛けています。脳梗塞の患者様には、脳梗塞の原因となる「脳動脈狭窄症」や「頚部頚動脈狭窄症」がみられることが多々あります。また、頭痛・めまいなどの精査で、偶然に脳動脈瘤が発見されることもあります。血管内治療のみならず、直達手術や保存的治療、画像による経過観察も含め丁寧に対応させていただきますので、お気軽にご相談ください。 緊急を要する脳卒中では、独自の「脳卒中疑い患者診療フローチャート」を作成し、脳卒中を疑う患者さんについてスムーズに診断・治療を行えるような体制を構築しています。夜間・休日などの診療時間外の場合でも、「院外画像診断システム」を利用したオンコール体制をとり、病院当直医と連携した診療を行い、必要時には脳外科医がすぐに駆け付けます。このシステムにより、脳外科医が院内に不在となる時間帯でも、患者さんの来院から検査、診断、治療方針の決定まで、平日の日中と同様の診療レベルを維持しています。
また、平日の日中は当科のスタッフが「脳神経外科(脳卒中)ホットライン」を常に携帯しています。脳神経外科疾患が疑われる患者さんがおられましたら、ホットラインを通じて直接当院脳外科医にご連絡いただくことで、迅速に対応しています。脳外科的な緊急対応が必要な患者さんがいれば、ぜひ、ホットラインをご利用ください。
その他、脳腫瘍、脊椎脊髄疾患、顔面けいれんなどにつきましては、術中モニタリングやナビゲーション、ハイブリッド手術室等を使用して、安全性を担保しながら手術を行っています。
手術だけでなく、片頭痛や緊張型頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛などの一次性頭痛に対する診療や、めまい、肩こりに対する診療も、正確な診断と適切な薬剤選択により丁寧に行っています。