日本赤十字社 高松赤十字病院

TAVI

大切な心臓を守る、新たなアプローチ。TAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)

患者の皆様へ

大切な心臓を守る、新たなアプローチ。TAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)

身体にとって最も大切な臓器のひとつである心臓。近年、高齢化や食生活の欧米化などが原因で心臓の弁膜に異常をきたす方が増えています。そこで、高松赤十字病院では大動脈弁狭窄症の最新治療法「TAVI」を導入しています。

心臓の役割

心臓は、血液と一緒に酸素を体の中のさまざまな臓器に届けるポンプのような役割をしています。血液は各臓器で酸素が消費されると静脈を通って、いったん心臓の右心房から右心室を経由して、肺で二酸化炭素を排出します。そしてまた新たな酸素を含んでキレイになった血液が、今度は心臓の左心房から左心室を経由して、大動脈を通って、再び各臓器に酸素を届けていきます。

血液の正しい流れを維持する弁

血液の正しい流れを維持する弁

心臓には4つの部屋がありますが、それぞれ血液が前の部屋に戻らないように逆流を防止しているのが心臓の「弁」です。心臓には4つの弁がありますが、それらは常に動いていて、そのなかでも大動脈につながる部分は血流も一番多く、その出口である「大動脈弁」には大きな圧力がかかっています。その弁が動脈硬化が引き金となって硬くなり(石灰化)、血液の流れが悪くなるのが、「大動脈弁狭窄症」という病態です。

息切れや動悸にご注意!

心臓弁のなかでも圧力の負担が大きい「大動脈弁」は、一番障害の起きるケースが多く、日本における潜在患者数は70万〜140万人と推定されています。軽度では、ほとんど自覚症状がありませんが、息切れやめまい、動悸、胸の痛みなど。「高齢のせい」と考えてしまいがちな症状でも、実は心臓の弁に障害が起きているケースがあるのです。

新しい治療の選択肢

機能しなくなった心臓の弁は、新しい弁(人工弁)に置き換える必要がありますが、今までは開胸手術による治療法が主流でした。ただ「大動脈弁狭窄症」の重症な患者さんのうち、少なくとも約40%の方が、開胸手術に耐えうるだけの体力がないなど様々なリスクがあることで、手術を受けることができませんでした。そういったなかで、新たな治療の選択肢として誕生したのが、TAVIです。

小さな切開で治療できます

TAVIとは、カテーテルという細い管を通して心臓までアプローチして、新しい弁を留置する、日本では2013年に導入された最先端の治療法です。人工弁(生体弁)を装着したカテーテルを、太ももの付け根の5mm弱の穴から動脈に入れて心臓まで運ぶ方法(経大腿アプローチ)と、肋骨の間を6〜7cmほど切開して心臓の先端からアプローチする方法(経心尖アプローチ)があります。

  • 小さな切開で治療できます
  • 折り込まれた生体弁を装着したカテーテル

からだに優しい手術です

からだに優しい手術です

胸を開けることなく、手術中に心臓を止める必要もないので、TAVIは身体への負担が少なく、手術時間や入院期間も短縮できます。ただ、欧米でも2007年頃から始まった当初は、高齢などで開胸手術のリスクがあって困難であると想定される患者さんのみの適応となっていました。その一方で、最新のカテーテル弁は技術も年々進化しており、術後5年経過したときの弁の機能は、開胸手術のケースと遜色ないデータも出てきており最近適応が拡大傾向にあります。現在は開胸もTAVIもどちらも問題ないと想定される症例でも条件が揃えばTAVIの選択が可能な時代になってきました。

最先端の治療を行うために

第三循環器科副部長
宮崎 晋一郎

高松赤十字病院では、2017年9月よりTAVIの治療を開始しました。TAVIでの治療を行うためには、TAVI施設認定病院として認可される必要があり、それをクリアするためには数多くの項目をクリアしなくてはいけません。オペもカテーテルも可能なハイブリッド手術室の設置や、総勢20〜30人の多職種のメンバーを揃えたハートチームなど、数年前から万全な準備をして、無事2017年にTAVIの認定を受けることができました。最先端の治療を地域の患者さんに提供できるようこれからも頑張っていきたいと思います。

よくあるご質問

  • TAVIはどんな方が対象ですか?

    TAVIは手術が必要な大動脈弁狭窄症と診断を受けた、おおむね85歳の以上方が対象です。 他には、合併症などの理由で人工心肺が使用できない方や、何らかの理由により外科手術が受けられない方も対象になる場合がありますので、ご相談ください。

  • 医療費はどのくらいかかりますか?

    TAVIの治療には保険が適応されます。医療費の概算については以下のとおりです。

    【70歳未満の方】
    • 通常の3割負担の方は、約1,800,000円の医療費がかかります。
    • 高額療養費制度を利用した場合、区分に応じて医療費が以下のとおり変動します。
    区分 医療費概算(月額)
    約310,000円
    約230,000円
    約140,000円
    57,600円
    35,400円
    【70歳以上の方】
    • 区分に応じて、医療費が以下のとおり変動します。
    区分 医療費概算(月額)
    現役並み所得者 約140,000円
    一般 57,600円
    低所得者Ⅱ 24,600円
    低所得者Ⅰ 15,000円
    • ※区分について詳しくは、加入されている健康保険の窓口へお問い合わせください。
    • ※食事代、個室代等自費分については、別途必要になります。
    • ※医療費概算は、14日間入院のものです。
  • 入院期間は何日間程度でしょうか?また、術後どのくらいから動けるようになりますか?

    入院期間はおよそ術後7~10日程度が目安です。経過が順調であれば、手術翌日からリハビリテーションを開始します。

TAVIを支えるハートチーム

TAVIのメリット

一般的に心臓を手術する際には、皮膚や胸骨を切開して、心臓を止めて人工心肺につなぎながら手術を行います。その点、TAVIは数センチほどの切開で、心臓を止めることなく「大動脈弁」を留置できるので、圧倒的に身体にやさしい、負担のない治療といえます。TAVIにも治療のリスクはありますが、それを最大限カバーするのがハートチームの役割です。

専門家の知識を集結

TAVIのハートチームには、いわゆる内科と外科の医師によるチーム医療だけでなく、麻酔科医、心エコー検査技師、臨床工学技士、放射線技師、オペナース、カテーテルナース、理学療法士など、多種多様なメンバーが意見を出し合い、協力しながら病態の評価や治療を進めています。その多くの「目」があることで、正しい判断のもと治療にあたることができるのです。

容態に応じた治療方法

患者さんにとってベストな治療を選択するために、診療科の垣根を越えて、それぞれの専門分野の知識や経験を出し合い、退院後のサポートまで全てのプロセスをフォローするのが、高松赤十字病院のハートチームです。

新たなステージへ

第一心臓血管外科部長
榊原 裕

現在TAVIの適応は、開胸手術のリスクがある高齢者が中心ですが、術後のデータも良好な結果が揃ってきており、技術や道具もどんどん進化しているため、今後は適応範囲も広がっていくと思います。TAVIと開胸手術、それぞれの使い分けを慎重に行いながら、ハートチームの専門ノウハウを集結させることで、患者さんにとって最適な治療を提供してきたいと考えています。

お問い合わせ

TAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)に関するお問い合わせ
平日13:00-17:00の間にお願いいたします
087-831-7101(代表)
内線(1200-1201)
※かかりつけ医をお持ちの場合は紹介状を持参の上、ご来院ください

医療従事者の皆様へ

TAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)とは


本館北タワー 新しいハイブリッド手術室


2020年2月 100例到達

弁膜症治療は新たなステージへ

TAVI 人工弁

弁膜症の代表的な疾患である大動脈弁狭窄症は、昨今の高齢化社会において増加傾向にあり、65歳以上の2~4%程度にみとめております。標準的治療は外科的大動脈弁置換術ですが、高齢で手術のリスクが高い方や体力が低下した方を対象に、開胸しないでも治療ができる経カテーテル的大動脈弁置換術(別名TAVI:Transcatheter Aortic Valve Implantation)が2013年10月より本邦でも導入されました。その後、TAVIの成績が良好であるということが様々な試験で証明され、高齢で中等度リスクの患者にも適応が拡大しました。今後、カテーテル弁の進化とともにさらに成績は向上することが予想されております。

さて当院でもTAVI導入のために準備を進めておりましたが、2017年7月に認定施設となりました。この治療では外科・内科・麻酔科・看護師・臨床工学技士・放射線技師など総勢20人以上のスタッフで構成されたハートチームを形成し、密な連携を取りながら一人の患者さんの治療にあたります。
弁膜症の治療は新たなステージに入り、受けられる治療の選択肢の幅がこれまで以上に広がっていくことが予想されます。当院はこれまで香川県下の多くの病院に支えて頂いておりましたが、TAVI施設認定病院として認められたことにより、今後もさらに地域の先生方のご要望にお応えできるのではないかと考えております。

担当医ごあいさつ

宮崎 晋一郎(みやざき しんいちろう)第三循環器科副部長

これまでの弁膜症カテーテル治療の経験を糧に、TAVIの安全な導入に全力を注いでいきます。
2014年10月から開設しております弁膜症外来では香川県下の多くの先生方より弁膜症の患者さんをご紹介頂いておりました。2017年9月より大動脈弁狭窄症に対するTAVIが開始となり、年々適応患者さんが拡大傾向のため、当院でも増加しております。2019年は年間50例のTAVIが施行され、2020年2月には開始してから100例に到達しました。現在(2020年4月)も30日死亡率0%、緊急開胸術0%を維持しております。なお、2019年からは挿管・人工呼吸を行わない局所麻酔(+鎮静)でのTAVIも開始し、より患者さんの体に優しい低侵襲治療を心がけております。弁膜症はAS以外にもたくさんあり、合併していることもあるため個々の状態に合わせた最適な治療法を提案させて頂きます。
いつでもお気軽にご相談ください。

●弁膜症外来 毎週木曜日 14:00-

※弁膜症外来に関する詳細はこちらをご覧ください。

榊原 裕(さかきばら ゆたか)第一心臓血管外科部長

高齢者の大動脈弁狭窄症が増加する中、待望のTAVI導入が実現します。

TAVIは従来の弁置換術(sAVR)と比較し、胸骨切開が不要で術当日からリハビリが可能です。また、体外循環が不要で圧倒的な低侵襲性を実現します。しかし、特有な合併症(弁周囲逆流や房室ブロックなど)も存在し、現時点では治療の不確実性があるのも事実です。

従来のsAVRとの使い分けを慎重に行い、それぞれの患者さんにベストな治療を提供していきたいと考えています。

●外来日 毎週水曜日 8:45-

高松赤十字病院 Heart Team

最新の設備とチーム医療で心臓を守る

当院では以前より循環器内科、心臓血管外科のハートチームを構築し、心臓、血管疾患について最善の治療を相談、実行してきました。TAVIについても侵襲の少ない有力な治療手段と認識しており、チームとしても何とか早く実施したいものと願っておりました。TAVIの実施認定施設基準を満たすための手術実績(PCI数、開心術数、ステントグラフト治療数)や専門医などの人員についてはすでに基準をクリアしていました。しかしながら、ハード面のハイブリッド手術室を有していなかったため、施設認定まで時間を要しました。このたび、念願のハイブリッド手術室が完成し、協議会の査察を終え、無事TAVIの実施認定施設(全国で120番目、内52施設は大学病院)となることができました。今後は、この最新技術を活かして、地域の皆さまのご期待に沿えるようチーム一丸となって患者さんの治療にあたっていく所存です。

西村 和修(にしむら かずのぶ)院長・総合血管治療センター長
●外来日 毎週月・金曜日 午前のみ
高松赤十字病院 地域医療室
087-831-8131(直通)
FAX: 087-863-4060