日本赤十字社 高松赤十字病院

カテーテルアブレーション

不整脈を根治する時代へ カテーテルアブレーション

アブレーション治療について

初めに

不整脈と様々な種類がありますが、心臓の動きが乱れる(不整になる)病気の総称です。
心房細動に代表される各種不整脈は、無症候性の方がいる一方で、発作の度に強い症状に悩まされる方も多い疾患です。
カテーテルアブレーション治療は、不整脈の根治を目指した治療になります。カテーテル手術は血管への穿刺(少し太めの管を刺す)による治療のため、外科的手術のような切開を伴わない負担の少ない治療です。
ただ、少ないとは患者様負担や合併症のリスクもありますし、残念ながら治療後の再発のリスクもあります。
ここでは心房細動を中心としたカテーテルアブレーションにおける患者負担軽減への取り組みや新しい治療方法による安全性などの向上についてご紹介します。

心房細動カテーテルアブレーションの進歩

心房細動のカテーテルアブレーションは1998年に肺静脈への治療介入が報告されて後、様々な知見と手術器具の進歩にてより安全かつ有効な治療へと年々進化しています。
2000年に現在でも中心的な手術法である肺静脈隔離術が報告され、高周波アブレーションにより肺静脈隔離術が施行されておりました。現在でも様々なアブレーション手術に使用されている高周波アブレーションには、その汎用性の高さの一方で、手技的な難しさや心タンポナーデを含めた合併症などの危険性がありました。それに続いて2014年にはクライオアブレーションというバルーンカテーテルが出現し、高周波に比べて簡便のため手技的な難易度の低下や術者間での治療成績の安定化、合併症リスクの低減などが得られるようになりました。そして、それに伴いガイドラインでも心房細動アブレーションの推奨度が向上していき、2018年では薬物療法の先行が推奨さえておりましたが(図1)、2024年のガイドラインではクライオバルーン(図2)を用いたカテーテルアブレーションを有症候性発作性心房細動において、アブレーションを第一選択とすることが第一選択治療のひとつとなりました。(図3)

図1
図1

図2
図2

図3
図3

カテーテルアブレーションによる負担を減らす

カテーテルアブレーションは主に静脈穿刺による治療のため、切開をくわえる外科治療などに加えて低侵襲にて施行できます。それに加えて上述の治療デバイスの進歩により安全性も増したことから症例数は増加の一途をたどっている一方、低侵襲ながら患者さんは下記のような負担・苦痛を訴えられることがあります。

①術前の血栓チェック目的の経食道エコー検査による負担
②鼠経穿刺後のため長時間の安静臥床による腰痛
③術前からの尿道カテーテル挿入による疼痛・不快感
④穿刺部疼痛
⑤アブレーション後の胸痛・嘔気
⑥呼吸管理に伴う咽頭痛

これらの患者様の声に基づいて我々は上記への対応を進めてきました。

①経食道エコーは術前の造影CTにて十分に左心耳血栓の評価ができることから、以前は経食道エコー・左房造影CTとも行っておりましたが、現在は腎機能に問題なければ全例造影CTのみとしております。

②・④術後安静も以前は動脈穿刺を含め、圧迫と表皮縫合で止血を行い、抗凝固薬も使用するため再出血予防で座位まで5時間以上の時間を要しておりました。現在は早期の安静解除のため、積極的に止血器具を使用しつつ、座位までも最短帰室後2時間後まで短縮できております。また、止血器具を用いた症例では縫合をしないため、抜糸に伴う疼痛もなくなりました。

③尿道カテーテルは術前に病室で挿入しておりました。挿入時の疼痛・羞恥心を伴うこともあり、現状ではアブレーション手術時の鎮静後に挿入としております。また、男性は挿入中のみならず抜去後の排尿痛・血尿などが女性に比べ頻度が多いことから、バルーン留置自体を施行しないよう努めております。

⑤については術中の麻酔・鎮痛薬による嘔気があります。また、心筋への治療に際して、高周波・クライオアブレーションともに熱障害であることから、ある程度の周囲臓器である食道・神経系への障害が伴っておりました。それに対して今年から当院でも採用しましたパルスフィールドアブレーション(図1)は食道を含めた他臓器への負荷が少ないと考えられております。これまでのエネルギーソースによる治療に比べて嘔気等の臓器障害の発現頻度が少ない印象であり、今後の成績を期待するところです。

図1
図1

アブレーションの流れ

実際に心房細動アブレーションを施行することになった患者さんの実際の流れを紹介していきます。

術前の準備としては術中・術後の血栓症予防のため、一般的に3週間の抗凝固薬導入と造影CTにて心臓内の血栓有無を評価します。
(以前は血栓評価に全例経食道エコー検査を施行しておりましたが、左房造影に変更後も血栓症などの発生なく安全にアブレーションを施行できております。)

図:実際の術前左房造影 3D・赤矢印 左心耳にて血栓が無いことが確認できます。

アブレーション手術は全身麻酔下で施行します。この際、気道確保目的でI-gelという器具を挿入しております。(以前は軽鎮静などで術中に治療に伴う胸痛等のご負担がありましたが、心房細動以外のアブレーションも含めて、ほぼ全例で鎮静を行うことにより負担なく手術に臨んでいただけるようになっております。)
尿道バルーンの挿入も負担軽減のため鎮静後に行っております。ただし、男性についてはバルーン挿入中・後の疼痛が女性より強いことから、安静時間の短縮に伴い原則バルーン無しで対応しております。

アブレーション手技につきましては、心房細動症例では両側肺静脈隔離を基本としております。
デバイスの進歩にて穿刺本数や手術時間は削減されており、最もシンプルな症例では穿刺は右鼠経2本のみ、手術時間は穿刺から抜去までで1時間弱となります。
(症例の背景に応じて頸部の穿刺も含めた手技も施行しております)

術後はある程度の覚醒後に病室へ帰室します。帰室後の安静時間は直後より寝返り可で、最短2時間から座位可としております。座位で30分経過にて穿刺部出血がなければ、点滴を終了の上で歩行可となります。
(以前は翌朝まで安静など長時間の術後安静を要しておりました。しかし、止血デバイス使用や鼠経の動脈穿刺を回避することで、安全に安静時間の短縮が得られるようになりました。)

下図:アブレーション終了時、鼠径部を止血デバイスにて止血した直後

術後は合併症や不整脈の早期再発の有無を1日経過観察のうえ、計3泊4日にて退院となります。

実際のアブレーション適応とは

不整脈については種類が多く、不整脈毎に治療適応が異なることからも、ここの患者様において薬物療法かアブレーション治療なのか、適応については迷われることも多いかと思われます。
その中で特に心房細動のアブレーション治療を積極的に検討する際のポイントとしては、
①年齢、②動悸・心不全・脳梗塞などの自覚症状、③抗不整脈薬への抵抗性、が主なものと考えます。

①の年齢については、心房細動が経年的に進行する疾患のため若年の方ほど余命が長いため、心房細動の進行から塞栓症や心不全発症のリスクが経年的に増大します。そのため若いうちに積極的な治療が望まれ、ガイドラインなどでも年齢的には70台までは治療を考慮されております。ただ、認知機能・ADLが保たれているのならばご高齢でも治療相談となり、当院でも心房細動アブレーション治療の最高齢は91歳となります。

②の症状は最もわかりやすい指標ですが、これは動悸症状のみのことではありません。心房細動に伴った脳梗塞や心不全なども症状の一部であり、脳梗塞の再発率低下や心不全の改善も治療の目的となります。

③については、不整脈の停止や再発予防を目的に薬物療法を優先するも、十分な効果が得られない場合に、二の矢としてアブレーションを選択するケースです。一般的に薬物療法よりもアブレーションの方が再発の抑制・自覚症状の改善共に優れていることから、薬物療法にて改善が乏しい場合はアブレーションのよい適応となります。

上記を要点としつつ、患者様の心機能や全身状態等も考慮しつつ治療の効果やリスクを説明の上で相談させていただきます。

心房細動を治療したい、そう思っていただけるように

本日は心房細動のカテーテルアブレーション治療における患者様負担軽減における取組と新しいアブレーションデバイスについて紹介させていただきました。アブレーション治療適応の拡大については様々な勉強会で周知がなされることは多い一方で、今回お伝えしているような取り組みはあまり触れられていないものです。そして、実際に治療の適応となる患者様はご自身の症状による苦痛への治療を希望するものの、アブレーションという未知の治療への不安とで治療を迷われることもあるかと思われます。その際に、0では無いものの手術に関連した身体的負担ができるだけ軽減されていることを地域の先生方からも患者さんにお伝えいただき、より適切なタイミングで治療を希望していただける一助になれば幸いです。